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“清宮幸太郎の弟”が22歳で現役引退「自分で決めたこと。未練はないです」…六大学ラストゲームで「どうしても打ちたかった」“涙の最終打席”秘話
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清水岳志Takeshi Shimizu
photograph bySankei Shimbun
posted2025/12/05 11:00
六大学野球リーグの最終戦で大学生活最初で最後となるヒットを放った清宮福太郎。大学で野球は引退するという
本人は監督から「外す」と直接言われたことはなかったが、思い当たる節があった。それは9月の東大戦のことだ。
「6回に代打で出場したんですけど、サードゴロでした(東大2回戦)。ライン上の当たりでファールだと思いこんで走らなかったんです。結果はフェアで塁間の半分も行かずに送球されてアウトでした。これを監督に怒られたんです。次は、ベンチを外されるなと思いました」
しかし、同期は彼を必要とした。ここから最後の早慶戦までベンチを外れることなく、福太郎の叱咤激励は秋の神宮にこだまし続けた。
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ゲームが終わって早慶両校の校歌のエール交換の間も福太郎の眼は赤くはれていた。
「球場を出るところで両親が待っていて、ご苦労さん、と言ってもらえました」
そして兄の幸太郎からもLINEでメッセージがあったという。
《最後にヒットが出てよかったな》
「やり切った感はあるんで。未練なく、やめられます」
早慶戦は2連勝で終えた。早実の初等部に入学以来、16年間、早稲田に通った。
野球はリトルリーグに入団したところから始まったが、これで現役選手としては引退する。野球人生も終えることになった。
「終わり良ければすべて良し、ではないですが、やり切った感はあるんで。やめることも就職も自分で決めたことですから。未練なく、やめられます」
ヒットから数日たった電話の声からは充実感が伝わってきていた。
◆
幸太郎と、福太郎――。
十数年前、「清宮」の名字がメディアに現れて真っ先に着目したのはその名前だった。
<次回へつづく>

