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「次戦で引退」武尊34歳がついに宣言…広がっていた“限界説”は妥当だったのか? 現地で見た獰猛なKO、明かした本音「身体が壊れてもいい」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byONE Championship
posted2025/11/23 17:00
ピューリックに勝利し、「次戦で引退」を表明した武尊
ようやく、ではあるが最近はアクティブレスト(適度に体を動かしながらの休養)も取り入れ、調整がうまくいくようになった。そのことで“最後”を具体的に意識するようになったのかもしれない。
「引退が見えたので結婚したというのはあります。あとは奥さんがずっと支えてくれたおかげで、いま試合ができている。コンディションが作れて、病気(鬱とパニック障害)で苦しんでた時も支えてくれて。それを隠しているのも嫌なので。この人がいるからリングに上がれて勝てたんだよというのをみんなに知ってほしくて」
いま現在の調子は悪くないのだ。限界でも衰えでもない。武尊は引退について、こう説明した。
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「今が強い武尊を作れる最後の時期だと思ったので。次は“最強の武尊”で闘います」
「もう体が壊れても勝てばいい」
あるMMAファイターは「これ以上は強くなれないと思ったら引退する」と言っていた。武尊も同じだろうし、武尊のマインドで“最強の自分”を仕上げようとしたら、後先など考えられるわけがない。その意味では“限界”と言ってもいいのかもしれない。
ONEのチャトリ・シットヨートンCEOは『ロッタンvs武尊2』の舞台として来年4月29日の日本大会を候補に挙げている。右拳の負傷が治ったら、すぐに試合に向けた練習に入ると武尊。つまり来年の春まで、ひたすら肉体と精神を研ぎ澄ませていく日々が続くのだ。
「(ラストマッチでは)次を考えなくていい。ということは次で出し切れるということ。(今回は)どこかで次のことを考えなきゃというのがあって。ロッタン選手と闘うまで体を保たせなきゃと。セーブはしてないんですけど気を付けてました。でも次は全部出し切れる。もう体が壊れても勝てばいいと思ってるので。過去最高で最強の体を作って、必ず勝って終わりたいです」
体が壊れても勝てばいい。そう言える選手は他にもいるだろう。だが本当にそれを実践してしまいそうだと信じられるのは武尊くらいだ。キャリア最後にして最強の武尊を、心して見届けたい。


