箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
高校駅伝9年前の奇跡「主将が怖くて喜べなくて(笑)」…“廃校直前”離島の「普通の公立校」が県大会11連覇の強豪私立に圧勝→全国大会に行った日
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by取材対象者提供
posted2025/11/04 11:02
廃校が決まっていたため、小豆島高校として「最初で最後」の全国高校駅伝出場を決めた瞬間。メンバーはほぼ島内出身者で、まさに快挙だった
増田本人はこう苦笑する。
「実際の力の差って自分たちだとわかりにくいんですよね。他のチームの監督さんからそう言ってもらえて『え、そんなにウチ強くなっているの?』と、半信半疑なりに自信になったのを覚えています」
そのまま夏を超えた10月の記録会では、県駅伝の1カ月前にして主力のほぼ全員が5000mの自己ベスト記録を更新。初優勝に向け、その機運は明らかに高まっていた。
ADVERTISEMENT
「自信はやたらありましたね。油断……という感じじゃなくて、『ここまで来たら絶対いける』というか。割とポジティブな雰囲気を保っていたと思います」
真砂は高校最後の県駅伝直前の雰囲気を、そんな風に記憶している。
地元の、離島の公立校から全国高校駅伝へ――。
真砂がそんな突拍子もない思い付きをしてから2年。さまざまな紆余曲折こそあったものの、チームは夢舞台まであと一歩のところまでやってきていた。
迎えた勝負の県予選…その結果は果たして
結果から言えば、1区を任された向井のところで早々に勝負の大勢は決した。
「ウチは3区と4区の長距離区間に増田と僕が控えていたので、そこは確実に尽誠に勝てる区間だと踏んでいました。だから1区の向井はとにかく尽誠から遅れないことが重要でした」(真砂)
相手もエースを起用する最長区間で無理をして差をつけにいく必要はない。とにかく王者から出遅れないこと。それが至上命題だったのだが、向井の強さは想像以上だった。
「遅れない」どころか、中盤以降はライバルの1年生エースをどんどんと突き放していく。1区10kmが終わったところで、尽誠との差は早くも1分近くになっていた。
しかも香川県の駅伝コースは、同じルートを延々と往復する形である。結果的に相手との差が、後続のランナーにも一目瞭然で分かってしまう。そのため、負けているチームはより焦りやすくなるというコース特性も有利に働いた。
4区を任された真砂は、自身にタスキがつながった時点で勝利を確信したという。
「勝負をかけなくていい1区で、すでに大差がついた。しかも3区の増田も区間タイ記録で走ってくれて、僕のところにタスキが来た時点でもう2分近い差になっていました。この時点で、脱水症状とかのアクシデントがない限りは勝ったと思いました」
その真砂も区間新記録でさらに1分以上、尽誠学園を突き放すと、残る3人のランナーも危なげなく走り切った。


