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高校駅伝9年前の奇跡「主将が怖くて喜べなくて(笑)」…“廃校直前”離島の「普通の公立校」が県大会11連覇の強豪私立に圧勝→全国大会に行った日
posted2025/11/04 11:02
廃校が決まっていたため、小豆島高校として「最初で最後」の全国高校駅伝出場を決めた瞬間。メンバーはほぼ島内出身者で、まさに快挙だった
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別府響Hibiki Beppu
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2016年1月――この月に行われた香川県高校新人駅伝は、小豆島の圧勝だった。
王者・尽誠学園の同大会24連覇を阻むのはもちろん、5区間すべてで区間賞を獲得する完全優勝のおまけつきだった。
人口2万人ほどの離島にある「普通の公立校」が新人大会とはいえ、とうとう県下に轟く絶対王者を破って見せたのだ。そのインパクトはかなり大きかった。
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当時、1年生ながらチームのエースだった向井悠介は、こう振り返る。
「前年の県駅伝でかなり尽誠と差が詰まってきているのは感じていて。その状態でこの大会で圧勝できたことで、『みんなが普通に走れれば、都大路にいけるやろ』という雰囲気になってきていました」
そんな雰囲気になったチームは、自然と意識も高まっていく。
前年まではチームに対して厳しく接したことで、仲間からの反発も受けていた2年生主将の真砂春希も、「3年生になるころには全然、言うことがなくなってきていた」と苦笑する。
「やっぱり都大路という目標が全員にとって現実的になったのが大きかったです。もちろん油断しないように、『ただ勝つだけじゃ嬉しくないやろ。(2年前に)尽誠が作った県記録を抜かないと勝ったことにはならんじゃろ』というような話はしていましたけど」
隣校との合併も決定…「最初で最後」の都大路へ
また、同時にこの頃には隣の土庄高校との合併も決まり、この年度が小豆島高校として迎える最後の1年となることも確定していた。そんな外的要因もあって、学校としての「最初で最後の都大路」へのモチベーションはますます高まっていた。
夏のインターハイ路線では2年生になった向井と3年生になったエースの一角・増田空が1500mと5000mでインターハイまで進出。真砂も5000mで四国大会7位(※6位までがインターハイ出場)と、全国の舞台まであと一歩のところまでたどり着いた。
エース格の3人だけでなく、それ以外のメンバーも県大会を軒並み突破するなど、チーム力の底上げもどんどんと進んでいた。
増田は他校と合同で行った夏合宿で、某強豪校の監督から言われたこんな言葉を記憶していた。
「普通に走れば、今年は5分差で小豆島が勝つと思うよ――」

