プロ野球PRESSBACK NUMBER

阪神の消えた天才“じつは身体に異変あった”プロ1年目…5000球投げた「左ヒジがチクチク…違和感あった」田村勤が明かす激動半生 

text by

岡野誠

岡野誠Makoto Okano

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2025/10/31 11:01

阪神の消えた天才“じつは身体に異変あった”プロ1年目…5000球投げた「左ヒジがチクチク…違和感あった」田村勤が明かす激動半生<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

阪神時代の田村勤。1990年代初頭、抑えの切り札としてチームを支えた

「肩を作るには、キャッチボールをした後、捕手を座らせて30球以上投げます。だいたい、2回ぐらいから準備していました。すぐに出番があると助かるんです。試合中、3度ぐらい作って、マウンドに上がる前に100球放っている日もよくあった。登板なしで『ブルペン完投』する時も結構ありました」 

田村が見た落合博満…天才エピソード

 田村は、無死満塁などの大ピンチで何度も救援した。窮地を切り抜けるたびに、信頼度は上がっていく。オールスターの頃、西宮球場で練習をしていると、中村勝広監督から「来季は抑えで行く。後半戦はその練習をしてくれ」と伝えられた。

「チャンスってなかなか巡ってこないだろうし、掴み取るしかないなと」

ADVERTISEMENT

 25歳のオールドルーキーは手痛い場面で打たれると、必ず仕返しをした。デビュー戦で一発を喰らった小早川毅彦、サヨナラ2ランを浴びた池山隆寛に対し、次戦以降は強気で攻めた。そんな反骨心の強い男も、落合博満の技術には唖然としていた。

「ナゴヤ球場で逆転3ラン打たれましたね。そもそも、試合前の打撃練習の時点で、精神的に負けていたのかもしれない。落合さんは三塁ベース、二塁ベース、一塁ベースに打球を当てて練習を終えるんですよ。そんな人、見たことないですよ」

 ルーキーイヤーは、3勝3敗4セーブ。50試合に登板し、1044球を投じた。3イニングで69球放った日もあれば、1打者にわずか2球で退いた日もあった。だが、ブルペンでの投球を概算して含めると、その数は5000を大きく超える。普段の練習、キャンプ、オープン戦を入れれば、1万球を確実に上回るだろう。

「駒澤大学時代、監督から『明治が1日300球なら、それ以上投げろ』と言われていました。それでも、肩やヒジを故障しなかった。自分は何球投げても大丈夫だと思っていました」

活躍の1年目に…じつは異変あった

 史上最速ペースで黒星を重ねた91年の阪神は、優勝の広島に26.0ゲーム差をつけられる断トツの最下位。長いトンネルを抜け出せなかったが、球宴明け26勝30敗と持ち直した中村監督には希望の光が見えていた。

〈暗い話題ばかりでしたが、先発5人と後ろの田村が確立できたのは収穫です〉(1991年10月15日付/日刊スポーツ大阪)

 この時、指揮官の言葉を真に受ける者はいなかった。過去5年で4度の最下位。92年も、評論家は軒並み、タイガースを低位置に予想した。開幕前、田村には期待と不安が入り混じっていた。

【次ページ】 監督も絶賛「田村と心中よ」

BACK 1 2 3 NEXT
#阪神タイガース
#田村勤
#亀山努
#落合博満
#原辰徳
#新庄剛志
#藤川球児
#池山隆寛
#江川卓
#山崎隆造
#小早川毅彦
#岡田彰布
#和田豊
#八木裕
#仲田幸司
#大石清
#中村勝広
#小川健太郎
#真弓明信
#岡崎郁
#畠山準
#立浪和義
#ヤクルトスワローズ
#読売ジャイアンツ
#長嶋茂雄
#吉田義男
#野村克也
#松井秀喜
#大谷翔平
#佐々木朗希
#オリックス・ブルーウェーブ

プロ野球の前後の記事

ページトップ