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「絶対に前田君に勝ちたくて…」箱根駅伝予選会「知られざる名勝負」のウラ話…東農大“留学生級”大エースと東大“史上最強”ランナーの数奇な縁
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生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2025/10/19 18:15
箱根駅伝予選会で日本人5位、6位に入った東大の秋吉拓真と東農大の前田和摩。同じ兵庫県の高校出身のふたりにはある因縁が
関東インカレでは5000m で14分09秒10のタイムで13位、1万mでは 28分56秒02で12位と入賞ラインには届かず。6月の日本インカレでは5000mに出場し、こちらは14分10秒75で14位だった。
「目標としていた関東インカレ、日本インカレで結果が出せませんでしたが、夏もいい練習が出来ていました。今日はイメージ通りのレースが出来て、それがうれしいです」
5kmを14分56秒と日本人トップで通過し、常に日本人先頭集団に秋吉の姿があった。時には先頭に出て集団全体をコントロールする動きを見せるなど、自信がないとできない走りだった。
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私がラスト1km地点で見た時、白いキャップをすでに脱ぎ捨て、黒髪に明るい色が混じっていることにちょっとした驚きを覚えたが、走りによる表現力が増しているように見えた。そしてラストは前田に勝とうという明確な意志があった。
箱根本選は…「1区を走りたいと思っています」
秋吉は関東学生連合チームに1番手で選出されることが確定。いよいよ2度目の箱根に挑むことになる。
「前回は、ぎりぎりで8区を走ることができましたが、今回は昨年より力がついているので、1区を走りたいと思っています」
スピードランナーとの競演が楽しみである。
今年1月に取材した段階で、進路については「競技継続か、大学院入試か、それとも両方を追うか」迷っていたが、東大大学院の情報理工学系研究科・知能機械情報学専攻の院試験にすでに合格。一方で、神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズで競技を続けることが決まっている。
卒業研究と同時に、箱根駅伝の準備。秋吉拓真にとって、4年生の秋と冬は、とても忙しい季節になりそうだ。

