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「絶対に前田君に勝ちたくて…」箱根駅伝予選会「知られざる名勝負」のウラ話…東農大“留学生級”大エースと東大“史上最強”ランナーの数奇な縁
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生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2025/10/19 18:15
箱根駅伝予選会で日本人5位、6位に入った東大の秋吉拓真と東農大の前田和摩。同じ兵庫県の高校出身のふたりにはある因縁が
前田は東京農業大に進んでからも、10000mで日本人学生歴代最高の27分21秒52のタイムを記録し、一昨年の箱根駅伝予選会では1年生ながら日本人トップに入っている。
「高校時代は背中を追いかけてばかりでしたけど、今日は前に出られて良かったです」
ゴール直前は、秋吉がひとりだけ中距離選手のようなラストスパートを見せていた。高校時代から足掛け5年――そこには当人にしか分からない思いがあったのだ。
連合チームのルール改定…2度目の出走が可能に
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もうひとつ秋吉が順位にこだわった背景には、今回から関東学生連合チームの編成ルールが変わったことも影響している。変更点は下記のようなものだ。
●予選会落選校のうち、総合11位から20位の学校に1枠ずつを与える。12月上旬のエントリー締切までに、この10校が選手を選出する。
●それ以外の大学の選手のうち、予選会個人順位の上位6名(各校1名まで)。
秋吉は個人順位でこれをクリア。大きかったのは、次のルール変更だった。
●本選において単独チームまたは連合チームで、すでに2回以上の出走経験がある選手は対象から除外する。
分かりやすくいうと、これまで学生連合チームで走れる選手は未出走の選手に限られていたが、今回から2度目もOKよ、ということだ。図らずも4年生になった今年、「セカンドチャンス」がめぐってきて、今回の予選会でそれをつかんだことになる。
秋吉は、東大での競技生活を次のように振り返る。
「1年の予選会の時は現実を見せつけられましたが、走行距離を増やしてから2年までは記録が順調に伸びてきました。ただし、3年生になってから成長曲線が緩やかになってしまったんですよね。それは仕方がないですが、やっぱり結果が欲しかったです。3年の終わりの箱根駅伝で結果が残せたのは自信になりました。ただ、今年も練習は出来ているのに、トラックではなかなか結果に結びつきませんでした」

