大谷翔平「大坂君には負けたと思いました」大谷のライバルだった“青森の天才”とは何者か？ “怪物中学生”のその後…運命を変えた「12歳の選択」 

　佐藤が語った「うちのエース」で「117キロくらい」出していたのは笹川裕二郎だった。福島リトルの元「四番・エース」だ。彼の記憶も大谷の体感速度を裏付ける。

「指を離れた瞬間、そのまま届くっていう感覚です。ストレートが速過ぎて、まず見えない。その上、今でいうスイーパーみたいなスライダーも投げていたので。私は左打ちだったのですが、最初の打席、変化球を空振りしたら、ボールが足に当たったんですよ。それぐらい内側に食い込んできた。もう、何とかしようにも何ともできなかったという……」

中学1年、13歳のときの大谷翔平（手前から二番目、旗手を務める）。水沢リトル時代、2007年撮影　©Sankei Shimbun

　笹川は現在、父親の後を継ぎ兄が社長を務める産業廃棄物の処理やリサイクルを担う会社の取締役を務めている。そんな立場もあってか、立ち居振る舞いが世慣れており、口調も丁寧だった。

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「私はその頃、身長が165センチくらいあって、それまで自分より大きな同級生に出会ったことがなかった。でも、大谷はそのとき170ぐらいはあったと思うんです。彼だけ異質な感じでしたね。遠目に見ても、あれが大谷なんだな、ぐらいの。高校野球とかだと球の速いピッチャーと対戦するとき、練習でピッチャーが3、4メートル前から投げたりするじゃないですか。あんな感じでしたよ。大人が短い距離から投げているようなイメージです。大谷はガッツポーズとかはしないんですけど、ノリノリな感じがしました。躍動感があって、気合いが入っている感じというか。この試合のあと、練習試合でも大谷と対戦したんですけど、そのときは遅く見えましたね。練習試合だとアドレナリンが出ないんだと思います」

　福島リトルも打線には自信を持っていた。大谷のストレートは何とかバットに当たった。

　しかし、そこにスライダーを混ぜられるともはやお手上げだった。福島リトルは1回から3回まで全員が三振だった。つまり、9者連続三振である。指揮官である佐藤が回想する。

「ベンチはずっとざわざわしているような感じですよね。4割、5割くらい打ってる子たちが簡単に三振してしまうわけですから。いちばん厄介だったのはスライダーです。選手たちは『見えない』って言ってましたね」

　リトルリーグの試合は6回までだ。大谷はこの試合、18個のアウトのうち、じつに17個までを三振で奪ったのだった。

「カーボンのバットが凹んだ」

　ただし、そんな試合ながらスコアは7－1だった。大谷の投球内容もさることながら、そんな大谷から福島リトルが1点を取ったという事実も驚きである。

　福島リトルは9連続三振を奪われて迎えた4回裏、内野安打で2アウト一塁とする。その場面でタイムリーを放ったのが四番の笹川だった。

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