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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「プロでも箸にも棒にも…ってことはないでしょう」プロ志望の東大“サブマリン”エースに元スカウトのリアル評は?「ちょっと心配なのは…」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/10/07 11:01
大学ジャパンの選抜合宿にも選ばれた東大4年の渡辺向輝。スカウトが見た父譲りのサブマリンがプロで通用するために必要な条件とは?
「仁科なんか、プレートの2mも前から投げていましたよ、ええ。ネットで現役の時の写真が出てきますから。バッターに訊くと、すごく速く感じるらしいですね、(スピード)ガンの数字より10キロぐらいは速く感じるって」
「2m」ほどではないかもしれないが、渡辺向輝投手だって、目一杯大きく踏み出して、右肩のうんと前でリリースできている。
実際に、私が神宮の一塁ダグアウト上方から観察して、確認済みである。
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「それと、下半身のバネも欲しいですね。ボールっていうのは、上から下に向かって投げるのが自然なので、それでオーバーハンドの投手が圧倒的に多いわけですが、アンダーハンドは自然の法則に逆らった投げ方です。だから、軸足の蹴りひとつでもね、人一倍の強さが求められるんですよ。向輝君、足は速いんですか?」
ものの本には「50m6秒8」とあって数字は平凡だが、試合前のアップでのフットワークや、実戦でのベースランニングを見るかぎり、はずむような弾力を帯びた走りであることは間違いない。
スカウトが見た父・俊介「カーブがホップする」
「えっとあれはね、岡山のマスカットスタジアムで、ジャパンの選考合宿か何かの時だったですかねぇ……」
鈴木スカウトが仁科投手の次に出会った「アンダーハンドの天才」が、新日鉄君津(当時)・渡辺俊介投手だった。ブルペンで投げている渡辺投手の変化球に、鈴木スカウト、ビビッと来た。
「カーブがホップするんですね。これは面白いと思いましたね……ええ。まっすぐは120キロ台で、ぜんぜんたいしたことなかったんですけどね。あのカーブがホップしているうちは使えると思いましたね。バッターにとっては、チェンジアップ効果もありますから。タイミングを外せますね。あ、こいつは仁科に預ければいいってね」

