- #1
- #2
野ボール横丁BACK NUMBER
高校野球に異変「ついに甲子園で“黒スパイク”が絶滅していた…」“白=汚れやすい”はもう古い…令和の高校球児「汚れたのがカッコいい」新トレンド
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/11 17:26
一昨年(2023年)の北海高校(南北海道)。もう黒スパイクは甲子園で見られなくなるのか
星 慣れと、道具の進化でしょうね。新基準の範囲内で、打感のいいバット、飛距離の出るバット、音の出るバットが出てきた。バットでいうと、この夏、一つおもしろい傾向があったんです。準々決勝の横浜戦でサヨナラヒットを打った県立岐阜商の四番・坂口(路歩)君の黒い金属バットもそうだったんですけど、ボールが当たる部分の色落ちがすごくて。つまり、それだけ使い込んだバットを使っていたんです。この傾向は、地方大会でもけっこう見られたんです。
――新基準バットは1mmほど厚さが増したぶん、耐久性が増したということですか。
星 それは前提としてあると思います。でも、甲子園に出てくる学校は、甲子園出場が決定したら、だいたいバットは新調してもらえますからね。ここまで古いバットを使う理由は金銭的な理由ではなく、あくまで感覚の中で、表面が育っていくような感覚があったんじゃないですかね。科学的には金属は劣化すればするほど反発力は落ちるので、古い方が飛ぶということはないんですけど。あと、もう一つ考えられるのは規定ギリギリの900グラムに限りなく近いバットだったということかもしれません。
ADVERTISEMENT
――だいたいそうなんじゃないんですか?
星 いや、金属バットは10グラム程度の誤差はだいたい生じるものなので、各メーカーとも900ギリギリでは作らないんです。そこを下回ると、違反バットになってしまいますから。なので、多いのは910グラムとか920グラムぐらいのバットですね。
――表記は900グラムになっていても?
星 そうなんです。なので、買うときは絶対、お店で量った方がいいと思います。中には900という表記で950グラムくらいある商品もあるので。うちの店では、そこまで誤差が大きいときはメーカーに交換を申し出ます。ただ、だいたいは「勘弁してください……」と言われてしまいますね。坂口君も同じ型の新調したバットを持ってみたら、なんか重いなと感じたのかもしれません。900ギリギリのバットは、僕らの間では「当たりバット」と呼んでいます。900グラム以上という規定が出来た今、少しでも軽いバットはそれだけ貴重ですから。この夏、極端に色落ちしたバットが目立った理由は、それが当たりバットだったという可能性もありますね。


