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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「ごめんなさい、野球は観ないわ」「オオタニの大ファンだよ」大谷翔平効果でニューバランスが人気? アメリカで取材「“おじさんの運動靴”はこう変わった」
text by

水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2025/09/04 11:01
ニューバランスとアスリート契約を結んでいる大谷翔平
「ごめんなさい、野球観ないわ」
マンハッタンの街を行きかう人たちの足元を凝視しながら歩き回ってみた。場所にもよるだろうが、エンパイアステートビルや多くのショップが並ぶ34丁目やミッドタウンの5番街は、予想以上にニューバランスを履いている人が多く、ざっと見て50人中2、3人といったところだった。
ニューバランスを履いている30代くらいの女性に野球は好きか聞いてみると「ごめんなさい、観ないわ」と言われてしまったので「大谷翔平を知っていますか?」とさらなる質問を重ねることには気が引けてしまい、できなかった。34丁目にある一番大きなスニーカーショップ「フットロッカー」に入ってみると、中央の一番目立つ場所がナイキの売り場になっていたが、次に目立つ両サイドがニューバランスの売り場になっていたので、大衆人気はやはり高いのだろう。
こうして、ニューバランスはニューヨークの街で意外と目立っていたのだが、そこに大谷効果があるのかということは、正直、わからない。そこで今度は、マンハッタンにある野球ファンのメッカへ行ってみた。6番街の50丁目と51丁目の間にある「MLBショップ旗艦店」だ。ここにはニューヨーカーのみならず観光でこの街を訪れた野球ファンも、ほぼ必ずと言っていいほど足を運ぶ場所。筆者が行った日も、午前のオープン早々から客がひっきりなしに入っていた。
野球ファンに愛好者が急増中?
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早速、店内の人たちの足元を凝視。
何と、ニューバランスがたくさんいるではないか!
ざっと数えて50人中12人。ニューヨークの街中や球場よりもその割合が多い。やはり大谷効果だろうか。
ショップ1階の入り口付近にはドジャースコーナーがあり、店内を歩き回った後にそこに戻ってみると、30代くらいのカップルが、背中に大谷の名前が漢字で入っている特別デザインのユニホームを手にしているところだった。男性の方は何と、ニューバランスのスニーカーを履いている。どこから来たのかと聞くと、プエルトリコから観光で来たのだという。
「オオタニの大ファンだよ。彼はベストだ」
彼はにっこり微笑みながらそう言った。
大谷ユニフォームがビックリ完売
MLBファンの本場とはいえ、こんな絵に描いたような熱い大谷ファンに出会えるとは、なんとラッキーなことか。と、このときは思ったのだが、10日後に再びショップを訪れてみると、驚くことが起こっていた。20枚ほどあった大谷の漢字ユニホームが1枚も残っていなかったのだ。店のスタッフに聞くと、在庫はもうなくなっているという。隣には山本由伸の漢字ユニホームもあり、10日前に30枚あったものがまだ29枚あった。もちろん山本を貶しているわけではなく、わずかな期間でもう売り切れているという大谷の方が尋常ではないのだ。10日前にこの売り場で経験した「絵に描いたような大谷ファンとの遭遇」は、ラッキーな偶然ではなく、この場所では当たり前の光景だったのかもしれない。大谷とニューバランスの威力を確かに体感できた。
思えば、大谷を起用したニューバランスのプロモーションもうまかった。



