甲子園の風BACK NUMBER
「広陵問題を“いじめ”と呼ぶのは違和感がある」暴力が生まれる“野球部寮の実態”とは?「カップ麺禁止だけでなく…」“謎ルール”が存在する根本的な理由
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph bySankei Shimbun
posted2025/09/01 11:02
今夏の甲子園の開会式にて。広陵高校は1回戦勝利後に辞退を発表した
「“いじめ”という言い方には違和感がある」
――寮を舞台に起こる暴力というのは、野球部に特有のことなのでしょうか。
「いえ、競技はあまり関係ないと思います。似たような構造があれば、同じようなことが起こってしまう。特に女子バレーボール、バスケットボール、サッカー、あとは駅伝なども、あるところはあるという話ですね」
――寮が暴力の温床になるというのは、日本国内で多いことなのでしょうか。
ADVERTISEMENT
「そんなことはないと思います。例えばヨーロッパの修道院で虐待が起きることもありますし、刑務所でもリンチが起きたりします。国や場所というより、閉鎖空間での人間関係が問題を発生させやすく、マネジメントを間違うと重大な人権侵害につながる可能性をはらんでいます」
――その上で野球部の場合、「甲子園に出る、全国優勝する」という目標に向かう中で、秩序が求められ、その維持のために暴力が起こりやすくなると言えるのでしょうか?
「暴力は、大きな集団で秩序を作るという目的のもと、逸脱に対する制裁として行われてきました。ルールから外れた行為に対する、上級生からの制裁。これを“いじめ”という言い方をする人もいますが、私は違和感があります。快楽を得るためのいじめではない。集団での暴行なんだけれども、なぜそれをするかというと、集団の秩序を維持するためだからです」
遠い昔から起きていた寮での暴力。絶えることなく繰り返されてきた歴史は、問題の根深さを思わせる。
では、止めることはできないのか。中村氏は、いくつかの提言をした。(続く)

