卓球PRESSBACK NUMBER

「今、卓球はルンルン気分です!」伊藤美誠の笑顔がはじけた…引退もよぎったパリ五輪落選からの原点回帰「自分だけのスタイルで突っ切ろうと」 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph byWataru Sato

posted2025/08/27 11:00

「今、卓球はルンルン気分です!」伊藤美誠の笑顔がはじけた…引退もよぎったパリ五輪落選からの原点回帰「自分だけのスタイルで突っ切ろうと」<Number Web> photograph by Wataru Sato

ロングインタビューに応じてくれた伊藤美誠

 原点回帰——。言葉にすると簡単だが、ここに行き着き、やり切ろうと決断するのは容易なことではない。高いレベルにいけば、自分の卓球を強くするためにどうすればいいのか、勝つためにはどうすればいいのか、考え悩むのは当たり前だ。

 だが、タイでシンプルな卓球で勝てたことで、あちこちに手を出し、自分を見失っていたことに気がついた。迷いの淵をさまよった長いロングバケーションが終わり、伊藤は、自分の持ち味を最大限に活かして戦う本来の姿に戻った。

卓球を楽しむことを思い出した

 その手応えを得たのが、昨年9月のチャイナスマッシュ大会だった。

ADVERTISEMENT

 変化に富んだ多彩な攻撃でゲームを組み立て、40%程度の確率で相手の台にスマッシュを叩き込むことができた。

「この大会の時、これだって思いました。変化で揺さぶり、スマッシュにもっていく確率がジワジワ上がっていったんです。そういうゲームができると楽しいですね。『ヘイ、ヘーイ』みたいな感じで相手を翻弄するというか、振り回している感があるんです(笑)。相手からしたら『はぁ?』みたいに思うけど、それが自分にとってはいいこと。自分のやりたいことが出来て、狙い通りの試合ができるようになってきました」

 自分の武器を発揮し、主導権を握って戦う。2025シーズンに入ってから伊藤は、じりじりと調子を上げていった。1月のシンガポールスマッシュでは銭天一を破り、1年7カ月ぶりに中国人選手に勝つなどしてベスト8入り。中国メディアは「難敵が帰って来た」と警戒感を表した。

 2月のアジアカップはベスト8、4月のWTTチャンピオンズ仁川大会でもベスト8。同月ITTFワールドカップ・マカオ大会では中国の蒯曼に惜敗するも3位になるなど、コンスタントに結果を残し、久しぶりに「卓球が楽しい」と思えるようになった。

「自分で言うのもなんですけど、本当に良くなりました。自分のなかで、これぞ自分っていうのを試合にうまく合わせられている感じでした。あと練習をやっていても相手をそれー、うごけー、って翻弄して、動かしている感じがして楽しいんですよ。あっ昔の自分はこれが楽しいって言っていたなと思い出しました(笑)」

 パリ五輪から1年、伊藤の卓球に強さと楽しさが宿ってきた。

つづく

#2に続く
「世界選手権の銅は、自分のなかでは五輪以上」その真意は? 伊藤美誠が説く“メダルの重み”…「これまでの全大会で一番のゲームができた」
この連載の一覧を見る(#1〜3)

関連記事

BACK 1 2 3 4
#伊藤美誠
#早田ひな

卓球の前後の記事

ページトップ