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「今、卓球はルンルン気分です!」伊藤美誠の笑顔がはじけた…引退もよぎったパリ五輪落選からの原点回帰「自分だけのスタイルで突っ切ろうと」
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佐藤俊Shun Sato
photograph byWataru Sato
posted2025/08/27 11:00
ロングインタビューに応じてくれた伊藤美誠
以前の伊藤は、練習も調整としてとらえ、ときによっては試合前も6時間以上練習をし、その疲労感を抱えたまま試合に出ていた。普通では考えられないことだが、試合への不安が伊藤を練習に駆り立てていたのだ。だが、それでは結果が出なくなった。試合への調整を再考するなか、休みを取り入れるとフレッシュな気持ちで試合に臨めるようになった。
「試合に臨むには気持ちの部分が大きいなというのも改めて分かりました。昨年から特に練習を大きく変えたということはなくて、試合前の準備をちゃんとすればストレスなく戦えるんだなと思ったんです。
例えば海外の場合は、ホテルに浴槽があるのかとかを事前に確認しつつ、行ってホテルの部屋に入り、外の音が聞こえたり、窓が閉まらない時は、そこにタオルを入れて閉めるようにして寝られるようにするとか、行く前の確認、行った後の試合への準備は毎回するようにしています。以前は、海外は楽しいとか思って何も気にしなかったんですけどね(苦笑)」
「これが自分の持ち味だ」
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練習では卓球以外に自重の体幹トレをしたり、瞬発系のトレーニングを入れたりするようになった。前は練習が終わるとそのままだったが、クールダウンをして体をほぐすようにもなった。そうしたいろんな細かいことを取り入れていくと、体が思うように動かせるようになり、一方で卓球そのものは余計なものがそぎ落とされ、シンプルなスタイルに回帰していった。
「自分の持ち味はもともとスマッシュであり、変化やサーブだったりするんですが、年を重ねるにつれて若い選手が出てきたり、世界で勝つためにと思うともっといろんなことが出来た方がいいなって考えるようになるんです。私の場合、もっと相手の台に入れたいと思って、そこに考えが寄ってしまって、それがあまりいい方向にいかなかったんです。
昨年の夏休みに入る前、7月にタイで行われたWTTスターコンテンダーのシングルスで優勝したのですが、その時、サーブで相手を崩し、変化で左右に揺さぶってスマッシュを決めて勝てた。それが自分の持ち味だということに気がついたんです。その時、これは他の人にはできない。他に別のことをせず、このスタイルで突っ切ろう。そう思ったんです」

