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「沖縄尚学170センチvs日大三177センチ」“小さい”沖縄尚学の優勝は番狂わせだった? 証言「沖縄尚学にあって、県岐阜商になかった“バント”」公立校の敗因 

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田中仰

田中仰Aogu Tanaka

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/08/27 11:40

「沖縄尚学170センチvs日大三177センチ」“小さい”沖縄尚学の優勝は番狂わせだった? 証言「沖縄尚学にあって、県岐阜商になかった“バント”」公立校の敗因<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

沖縄尚学の甲子園優勝が決まった瞬間。雄叫びを上げる2年生エース末吉良丞

「僕らのチームは横浜さんとか仙台育英さんに比べて、一発がある打者はいません。ロング(長打)、ロングで畳み掛けるのが横浜なら、僕らは手堅く繋いでいくしかない。比嘉先生が何度も言っていたので。繋がりのある攻撃、繋がりのある守備、繋いで、繋いで、繋いで……って。誰か1人じゃなくて、チームが1つになれば、それが本当に爆発的なパワーを生み出す。それが今、本当に比嘉先生の言う通りだったなと思います」

 決勝で日大三を下したゲームに話を向けた。

「今日の試合もそうでした。バントって無死一塁とか二塁で選ばれるイメージあるじゃないですか。でもうちは1死から、成功しても2死になってしまう1死から、バントで送った。そこから8回の宜野座(恵夢)の追加点だったんで。あそこに自分たちのやりたい野球が詰まってました」

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 決勝で沖縄尚学はバントを6回試行して5回成功した。そのうち2回が、嶺井が言うように「成功しても2死になってしまう」1死からのバントだった。

「僕、吉田輝星さんの金足農業も、昨年の大社も見ていたので。超強豪校に比べて(身体は)小さい選手たちなんですけど、そんなチームが勝つというか。テレビ越しからでもチームワークが伝わってきていたので。今年の自分たちの代、めちゃくちゃ仲がいいんです」

 嶺井は昨年秋に心筋炎で入院している。今年の夏に間に合うかさえ不透明な状況で、練習に参加できない時期がつづいた。レギュラーにはなれなかった。ポジションは捕手。チームメイトの親密さは真実だろう。その嶺井がこんなことを言うのだから。「(レギュラー捕手の)宜野座の活躍が、一番うれしいです」。

 沖縄尚学の野球は、誤解を恐れずに言えば、“公立高校的”といえた。「繋いで、繋いで、繋いで……」。しばらくの間、嶺井の言葉が頭から離れなかった。日大三に敗れた県岐阜商、勝った沖縄尚学。2校の違いもそこにあった。シンプルだし、月並みでもあるが、超強豪校を倒すための「確たる答え」の一つだった。

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