甲子園の風BACK NUMBER
「比嘉監督はイタズラ好き」「僕は正直怖い」沖縄尚学選手たちが証言…比嘉公也監督44歳とは何者なのか? 社会科授業を週15コマ「比嘉先生の授業が一番好き」
posted2025/08/23 06:00
沖縄尚学の比嘉公也監督(44歳)。夏の甲子園、同高初の決勝進出に導いた
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph by
Sankei Shimbun
甲子園のベンチから放たれる眼光は鋭い。彫りの深い顔立ち、濃くて整った眉毛が表情に凛々しさを与えている。
沖縄尚学の監督、比嘉公也とは何者なのか――。
甲子園の常連校になった「沖縄尚学」野球部の歴史は、今夏で監督就任20年目を迎える比嘉の歴史と言える。1999年春、エースとして沖縄県勢で初めて甲子園を制した。大学時代にヒジを故障して選手の道は断念。大学で教員免許をとって指導者の道へ進む。母校の監督就任は比嘉が24歳のときだった。
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就任わずか2年弱の2008年に春の甲子園を制した。メンバーの大半が沖縄出身選手で、練習試合の相手はほとんどが沖縄県内の高校に限られる。そんな状況にあって“甲子園でよく勝つ”チーム。それが沖縄尚学だ。
「(趣味は)子どもたちの塾の迎えとか…」
準決勝終了からおよそ3時間半後、宿舎で行われた会見取材に比嘉がTシャツ姿で現れた。強豪校監督、それも決勝進出を決めた直後ということも手伝って、饒舌に答えてくれると思いきや、その真逆だった。記者たちの質問に対してどこか他人事のように淡々と答えていく。
「特に絶対甲子園優勝するっていうつもりで、指導もしてないので」
「どんなにやっても(甲子園に)行ける時と行けない時ってあると思う。(選手たちが)何かを学んだ3年間にしたいなとは思います」
成長の先に甲子園があればいいという……? そう質問した一人の記者に対して比嘉は、あたかも“その表現、いいですね!”と言いたげな表情でうなずきながら、言葉をためて「大きく育つことと、甲子園で勝つことが両立できればベストかなとは思ってます」と答えた。趣味を聞かれると一拍あけて「ないです。何にも(予定が)なければ子どもたちの塾の迎えとか……しいて言えば本読むくらいです」。とくに取材中盤以降は、記者たちを笑わせにかかっている様子がうかがえた。“間”を操っていたからだ。
試合中のいかにも闘将といった厳しい表情、会見中に見せたとぼけた表情。どちらが比嘉の本当の顔なのか。
選手たちの証言「監督はいたずらして、大爆笑してる」
準決勝で勝った後、選手たちの証言を集めた。
「いたずら好きっすね。自分ビビリで。虫が苦手なんですよ。甲子園に来てから山の奥にある練習場に行ったりするんですけど。そこで先生が虫を手に『どう? 持ってみる?』って近づいてくるんですよ」(背番号11・嶺井駿輔)


