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「日本の選手は質問しない」女子バスケ新HCコーリー・ゲインズが壊した“壁”とは? “19歳の主張”を即採用「ココ、思っていることを言いなさい」 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byFred Lee/Getty Images

posted2025/08/22 11:04

「日本の選手は質問しない」女子バスケ新HCコーリー・ゲインズが壊した“壁”とは? “19歳の主張”を即採用「ココ、思っていることを言いなさい」<Number Web> photograph by Fred Lee/Getty Images

バスケットボール女子日本代表HCコーリー・ゲインズ(60歳)

 選手との双方向のコミュニケーションの例として、ゲインズは田中こころとのやりとりをあげた。田中は、ベテランガードの町田瑠唯や山本麻衣が大会に出られなかったこともあって、いきなりスターティングポイントガードに抜擢された19歳。しかも、所属しているWリーグのENEOSサンフラワーズでの彼女のポジションはシューティングガードだった。しかし、ゲインズは最初から田中をポイントガードに抜擢した。田中を見てすぐに、「なぜ彼女は2番(シューティングガード)をやっているのか?」と思ったのだという。

「彼女は非常に攻撃的で、素晴らしいボールハンドリング能力があり、疲れを知らない。そして感情に左右されない雰囲気を持っていて、それは何が起きても変わらなかった。だから『彼女をポイントガードにしよう』と言ったんです」と、司令塔に抜擢した理由を語る。

 若さや経験の浅さからくるミスもあったが、準決勝の中国戦では1Qだけで21得点をあげ(試合を通して27得点、5アシスト)、大会後のテレビ番組で「あの試合は負ける気がしなかった」とまで言ってのけた。決勝のオーストラリア戦でも21得点、9アシスト。新しい役割と責任をこなして目覚ましい活躍を見せ、大会後にはアジアカップ・オールスターファイブに選ばれた。

「ココ、思っていることを言いなさい」

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 その田中とゲインズの間に、大会中にこんなやり取りがあったという。相手のフリースロー後の田中のボール運びが遅いことに気づいたゲインズは、「なぜもっと速く運べないんだ?」と聞いたという。すると田中は最初、「えっと……」と口ごもり、何か言うことを躊躇していた。

 ゲインズが「ココ(田中のあだ名)、いいから思っていることを言いなさい。大丈夫だから」と促すと、ようやく口を開いた。

「インバウンドのしかたが好きではないんです。気づいているかもしれませんが、私がインバウンド役をしたほうが速く運べます」

 もともとのゲインズの指示は、5番(センター)がスローイン役となり、4番(フォワード)が1番(ポイントガード)の田中にスクリーンをかけてボールを受け取る形だったのだが、田中は、それより、自分がスローイン役になって、入れたパスをすぐに返してもらって運ぶほうが速いペースでボールを運べると主張した。

【次ページ】 田中の主張を聞いたゲインズHCは…

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