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「日本の選手は質問しない」女子バスケ新HCコーリー・ゲインズが壊した“壁”とは? “19歳の主張”を即採用「ココ、思っていることを言いなさい」
text by

宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byFred Lee/Getty Images
posted2025/08/22 11:04
バスケットボール女子日本代表HCコーリー・ゲインズ(60歳)
「ペースはものすごく速くなくてはいけません。素人の目にはまるでカオスのように見えるかもしれません。私たちが何をしているのか分からなかったり、組織化されていないと感じるかもしれません。でも、相手が組織化されていないと感じ、不規則だと感じるということは、私たち相手に対策を講じることが難しいということです。試合ごとに違う選手が得点を取るから、相手も1人の選手に的を絞ることができないんです」
そのためには、まずは日本の選手ひとりひとりが、ふだんとは違うことを受け入れる必要があった。
「選手たちには、『もしかしたら奇妙に感じることもやるかもしれません。でも、勝つためには革新的である必要があるのだから我慢してほしい、私にチャンスを与えてほしい』と伝えました」
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また、選手たちには自らの役割が何なのかを考え、チームメイト全員の前で語らせた。与えられた役割ではなく、自分で考えて見つけた役割であること、そしてそれをチームメイトたちも聞くことが大事だった。必要だと思ったときにはゲインズが役割を加えたこともあったという。こうして、チームの枠組みができた。
コーチの発言はバイブルではない
ゲインズがチーム作りをするうえで一番大切にしているのがコミュニケーションだ。そして彼が考えるコミュニケーションは、常に双方向なのだという。
「選手たちには、何かが気になったときに我慢したりする必要はないと言っています。私は彼女たちが知っているコーチとは別のタイプのコーチだからです。コミュニケーションをオープンにしたい。ベテラン選手だけでなく、全員が話すことが最善なのです。新人や若い選手にもそう感じてもらいたかったのです」
「コミュニケーションは単に話すことではなく、最も重要なのはしっかりと耳を傾けること。日本の選手たちはそのことに慣れていませんでした。彼女たちはコーチが何か言うと、それがバイブルのようなものだと考えていたのです。言われたことに対して質問や疑問もなく、それをやるだけという姿勢でした。その壁を破ることで、彼女たちは私が異なるタイプのコーチであることを理解してくれるようになったのだと思います。だからといって、厳しくないということではありません。以前のコーチたちより多くのコミュニケーションを取るコーチということなのです」

