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甲子園の魔物「あかん、俺もあかん」大阪桐蔭・中田翔が焦り「すいません…」優勝したのに涙の謝罪・堂林翔太…松井裕樹は「肩が重いので」 

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posted2025/08/17 17:00

甲子園の魔物「あかん、俺もあかん」大阪桐蔭・中田翔が焦り「すいません…」優勝したのに涙の謝罪・堂林翔太…松井裕樹は「肩が重いので」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

甲子園の舞台では、その後プロで活躍した選手にも様々なドラマがある

 光星学院には田村龍弘(現ロッテ)と北條史也(元阪神)というプロの世界に進む2人がいた。それでも田村は「最初の打席で、あのスライダーを見て、自信を失いましたね。真っ直ぐだと思って振りにいったら、スライダーだった」と語るほどのピッチングだった。

 しかし松井は、前日に142球を投げて完投した状況でこの試合を迎えていた。疲れの見えたエースは、光星学院打線につかまり、8回に痛恨の3点を奪われる。味方打線も援護できず、松井の夏は終わった。それでも9回、松井は三者凡退に抑え、最後の打者はこの日15個目となる三振で締めくくったのは、「肩が重い」と語ってもマウンドを守ったエースとしてのプライドだった。

優勝したのに堂林翔太が“謝罪して泣いた”ワケ

<名言3>
すいませんでした……。
(堂林翔太/NumberWeb 2009年8月25日配信)

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 こう語り、涙したのは敗者ではない。2009年の夏の甲子園で全国制覇を果たした中京大中京のエース・堂林翔太がお立ち台で絞り出すように言った。

 勝者でありながら謝罪する――全国制覇の瞬間に流れた異例の涙は、怖さと安堵とともに、少しの喜びが入り混じったものだった。その背景には、奇跡的な展開があったからだ。

 試合は9回までに中京大中京が日本文理相手に10-4と大量リードを奪い、甲子園の観客もテレビの視聴者も大勢が決したと思っていた。しかし日本文理は9回2死から猛反撃。四球と2本の長打で2点を返し、なおも2死三塁と攻め立てる。この場面で4番・吉田雅俊が打った打球は平凡な三塁へのファウルフライだった。だが、その打球は中京大中京の三塁手・河合完治の数メートル後方にポトリと落ちる。

「打球は見えなかったけど、(河合)完治が捕るカッコをしたので、終わったんだと思った」

 試合後、こう語った堂林は吉田に死球を与えて降板。二番手の森本隼平も四球と2安打を献上し、ついに9-10と1点差まで詰め寄られた。なおも2死一、三塁。世紀の大逆転劇が目前に迫っていた。最後の打者・若林尚希の打球は三塁手の正面をつくライナー。見事なキャッチで試合終了となった。

 中京大中京が味わった“甲子園の魔物”。日本文理にとっては“最高の終わらない夏”となった一方で――堂林らにとっては少々苦い味の残る、勝利の果実だった。

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