桑田・清原のPLを倒して茨城勢初優勝から41年甲子園なし…“世紀の番狂わせ”の公立校・取手二高は「今、2年生の野球部員は2人だけ」 

「最初の選抜での経験が大きかったです。初戦の泉州（現近大泉州、大阪）戦はフワフワした感覚で、あっという間に試合が終わって負けた感じでした。地に足つけて戦えるようになったのは2回目の出場となった3年春の選抜からです。3年夏なんか余裕ですよね」

　3年の選抜、徳島商との2回戦では、1点リードの8回に貴重な2ランを放つなど活躍。聖地で試合数を重ねるにつれ、平常心で戦えるようになってきた。しかし、この本塁打には裏話がある。

スクイズのサインを見逃して……

全国制覇の記念碑と、当時活躍した下田和彦・現監督　©Katsuharu Uchida

「スクイズのサインを見逃していて本塁打を打ったんです。1死三塁の場面で、まさか自分にスクイズのサインが出されると思っていませんでした。三塁走者が本塁に走ってきて本塁打を打つシーンは珍しいんじゃないでしょうか（笑）。でも、それに対してじいさんから問い詰められることはありませんでした。押さえつけてはいけない子に対しては本当に自由にやらせるんです。そういうマネジメント力を自己流で学んでいったんだと思います」

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　下田は木内のことを「勝負師」と評する。チームは選抜を8強で終えた。稀代の勝負師は、目標とする4強以上に進むためには、まだ何かスパイスが足りないと考えていた。

　そんなときに“事件”は起こった。夏前の大切な時期となる5月。グラウンドから2週間もの間、ナインの姿が消えたのだ。

〈つづく〉