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広陵高校「甲子園辞退問題」の論点…高野連はどこで“対応を誤った”のか?「処分の実情…被害者に寄り添えていなかった」元朝日新聞記者の自戒

posted2025/08/11 17:08

 
広陵高校「甲子園辞退問題」の論点…高野連はどこで“対応を誤った”のか?「処分の実情…被害者に寄り添えていなかった」元朝日新聞記者の自戒<Number Web> photograph by JIJI PRESS

野球部内の暴力事案を発端とした広陵高校の辞退に揺れる甲子園

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安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

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 第107回全国高校野球選手権大会に出場している広陵高校(広島)が、8月10日、大会への出場を辞退すると発表した。1回戦を勝ち上がった後の決断となった。主催者によると、不祥事件にからんだ大会途中での辞退は、春夏通じて甲子園大会初となる。

 学校や主催者側は、どこで対応を誤ったのだろうか。

大前提は「被害者に寄り添い、包み隠さず報告すること」

 まず、広陵高校や主催者の発表などから、ここまでの経緯を確認したい。

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 部内暴力事案が発生したのは今年1月22日。1年生部員(当時)1人が部で禁止されているカップラーメンを寮内で食べたとして、2年生部員(当時)4人が別々に暴力行為をした。日本高校野球連盟は広島県高校野球連盟を通じて報告を受け、3月に「厳重注意」の処分を下した。合わせて2年生部員4人については事案発覚から1カ月間は公式戦に出場しないよう指導した。ただし、厳重注意の処分については公表しない規定になっており、発表はされなかった。被害生徒は3月末に転校したという。

 大会開幕直前の8月初め、SNS上でこの事案に関する投稿があり、5日に一部メディアが報道した。それを受けて広陵高校は6日に事実関係を公表し、大会本部は出場判断に変更はないと発表した。広陵高校は7日の1回戦に臨み、北北海道代表の旭川志峯戦に3対1で勝利している。

 しかし、中井哲之監督とコーチ、一部部員から暴力や暴言を受けたとする別の情報がSNSで拡散され、学校側はその件について第三者委員会を設置して調査を進めていることを公表した。また、広島大会開催中の7月には先の暴力事案の被害届が出されていたことも明らかになるなど、混乱が続いていた。

 SNS等で拡散された内容のどこまでが事実であるかについては、新たな発表や第三者委員会の調査を待たなければならないが、全体として学校側の対応が後手に回っている印象はぬぐえない。

 高校野球の不祥事案件の対応に長く携わった関係者は「昔も今も大切なのは初期対応であり、事実関係の確認である。何より被害者に寄り添い、包み隠さず報告すること」と指摘する。

 この点については、広陵高校の堀正和校長も「一つ一つの事象を最後まで良い形というか、円満に両者が納得して終える。そのような形をとることが何より最優先だったと、深く反省をしている」と会見で述べている。

【次ページ】 日本高野連の対応は適切だったのか?「処分の実情」

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