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広陵高校「甲子園辞退問題」の論点…高野連はどこで“対応を誤った”のか?「処分の実情…被害者に寄り添えていなかった」元朝日新聞記者の自戒 

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安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

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posted2025/08/11 17:08

広陵高校「甲子園辞退問題」の論点…高野連はどこで“対応を誤った”のか?「処分の実情…被害者に寄り添えていなかった」元朝日新聞記者の自戒<Number Web> photograph by JIJI PRESS

野球部内の暴力事案を発端とした広陵高校の辞退に揺れる甲子園

 今回の処分が世間で言われているように「甘すぎた」のかどうかは、現時点では判断できない。告発内容が事実と認定されれば、日本高野連は改めて審議し、より重い処分を下すことになるだろう。一方で、3月に学校側の報告を受けた段階では、現状の基準に沿って厳重注意の処分という判断をすることしかできなかった、というのが実情ではないだろうか。

被害者側の声を汲み取る改善策を

 改善の余地があるとすれば、被害者側の声をどう受け止めるかだろう。今回の場合、その声が日本高野連には届いていなかったように感じる。

 日本高野連の規定では、不祥事の報告は(1)校長が認定した事実(2)関係者の弁明の内容(3)校長がとった措置(4)校長の所見およびその他審議に関する必要な事項(5)当該事案に関する新聞報道記事の写しなど関連資料、と定められている(「注意・厳重注意および処分申請等に関する規則」第6条)。

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 本来、被害者の主張や訴えは(1)に含まれているはずだが、校長が事実確認をした段階で、その内容が矮小化されている可能性は否定できない。

 今後は発覚した経緯と、そのきっかけとなった通報内容や訴えを必ず明記するルールにしてはどうだろうか。

 もう一つ大切なのは、不服申し立ての場を設けることではないだろうか。

 実は「不服申し立ての規則」は規定されており、日本スポーツ仲裁機構に仲裁の申し立てもできる。ただし、これは処分を受けた学校や指導者が訴えることを前提としている。例えば、処分が軽いことを被害者側が不服とした場合までは想定していない。

 学校側(校長)が双方の言い分を聞いて事実を認定して報告するのが基本だが、被害者側がその報告内容や処分に不服がある場合は「異議申し立てできる」ということが明文化され、その場合は客観的な事実の認定を外部に委託するようなシステムがあれば、今回のような事態はひょっとしたら避けられたのではないだろうか。

【次ページ】 「従来、泣き寝入りしていたようなことが…」

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