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広陵高校「甲子園辞退問題」の論点…高野連はどこで“対応を誤った”のか?「処分の実情…被害者に寄り添えていなかった」元朝日新聞記者の自戒
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安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/11 17:08
野球部内の暴力事案を発端とした広陵高校の辞退に揺れる甲子園
今回の場合、3月に提出した報告書に基づいて厳重注意の処分が下された後も、学校側は被害生徒の保護者と話し合いを続けていた。その事実を県高野連や日本高野連に報告し、相談をしていたのか。堀校長が言う「円満」とは程遠い状況のまま、夏を迎えてしまったとすれば、残念というしかない。
日本高野連の対応は適切だったのか?「処分の実情」
では、日本高野連としての対応は適切だったのだろうか。
筆者は長く朝日新聞社に勤務し、主催者の一員として高校野球報道に携わり、大会運営にも一部で関わってきた。そのため、どうしても主催者寄りの考えになってしまう。その立場を明らかにした上で、意見を述べようと思う。
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まず、厳重注意を公表しなかったことへの批判については、現状の規定に沿ったもので間違いではなかったと考える。「SNSの時代に隠し通せるはずはない」という指摘もあるようだが、厳重注意を受けている高校は他にもたくさんある。果たして、そのすべてを公表すべきだろうか。
加害者の人数、状況、過去の不祥事件数などを基準に審議し、部全体や指導者の謹慎までには当たらないと判断した事案は公表せず、学校側できちんと処分と再発防止策を考えてもらう。ある種の「性善説」に基づいたもので、仮に学校側に隠蔽の意図があった場合の脆弱性は否定できない面もある。とはいえ、基本的な枠組みとしては、この方法は間違ってはいないのではないだろうか。
歴史を振り返ると、戦後に大会を復活させる際、連合国軍総司令部(GHQ)の指導もあって連盟を結成することになった。戦前に文部省から「野球統制令」が発令されたことを反省し、自主監理組織として、現在の日本高野連と、その上部団体に当たる日本学生野球協会をつくり、「自主自律」を目指して運営してきた。
過去には厳し過ぎるような処分もあったが、ここ30年間でかなり緩和され、連帯責任はできるだけ負わせないようにする基準になっている。例えば3年生が集団で不祥事を起こしたのであれば、関係のない1、2年生は処分しない。生徒の活動機会、試合出場機会をできるだけ奪わないようにしようという緩和策がとられてきたのだ。

