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「え、これで出んの?」前田健太がヤンキース電撃契約の直前につかんでいた「ゼロヒャク」の感覚…広島時代からの記者だけが知る“復活の兆し” 

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山田結軌

山田結軌Yuki Yamada

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posted2025/08/06 12:01

「え、これで出んの?」前田健太がヤンキース電撃契約の直前につかんでいた「ゼロヒャク」の感覚…広島時代からの記者だけが知る“復活の兆し”<Number Web> photograph by Yuki Yamada

MLB10年目を迎えた前田。今シーズンは試行錯誤の連続だった

 5月29日、メッツ傘下3Aシラキュース戦。2回途中9失点と結果だけみれば最悪だった。ただ、カブスが独自に算出するデータ分析システムの数値上では、それほど悪い内容ではなかったという。

「投げているボールの質とかいろんな数値を出した時に『予測防御率』みたいなものがあるらしいんですね。カブス独自のシステムか、どうなのか分からないですけど。それだと(防御率)3点台のボール、らしいんですよ。ボールの質としては。ピッチングコーチとか、データ(分析)の人と話すと、この前投げたボールは『このボールを投げ続ければ年間(防御率)3点台で収まるようなボールの質』って言われていたんです」

批判の言葉「極力、見ないようにしているんですけど…」

 前田の炎上は、インターネット上で逐一速報記事になっていた。ネガティブな見出しと批判的なファンのコメントに前田が心を痛めないわけはない。

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「極力、見ないようにしているんですけど。いつもだったら、それを力に変えてやっていくタイプだった。でも、不安を抱えている状態でより良くしようと日々取り組んでいる途中では、そういう(批判的な)言葉がけっこう刺さるっていうか……。でもそれをいちいち反論するのも、違う。結果を出すしかない、と思っている。年齢や衰えで球速が落ちたといわれるなら、自分が投げて証明するしかない」

戻った球速「完全復活」の兆し

 直近の登板2試合では、完全復活の兆しを強く印象付けた。7月23日のルイビル(レッズ傘下)戦は6回1安打無失点、同29日のインディアナポリス(パイレーツ傘下)戦は6回4安打1失点と好投した。この時、2021年に右肘の靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けて以降、フォーシームの最速となる94.2マイル(約151.6km)をマーク。タイガースからDFAになった頃は、短いイニングの全力投球でも90マイル(約145km)に到達するのがやっとだったことを考えると大きな進化だ。

 メジャーのレギュラーシーズンはまだ2カ月も残っている。新天地のヤンキースは、激戦のア・リーグ東地区2連覇と2年連続ワールドシリーズ進出を目指す。マエケンは自分を取り戻し、成長するために努力を続ける。その先には再び、メジャーのマウンドが見えてくるかもしれない。〈前編も公開中です〉

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前田健太〈ヤンキースとマイナー契約〉決断までの舞台裏「自分自身に不安を抱いている」苦しんだメジャー10年目「落とし穴になった“ある球種”」

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