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「え、これで出んの?」前田健太がヤンキース電撃契約の直前につかんでいた「ゼロヒャク」の感覚…広島時代からの記者だけが知る“復活の兆し” 

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山田結軌

山田結軌Yuki Yamada

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posted2025/08/06 12:01

「え、これで出んの?」前田健太がヤンキース電撃契約の直前につかんでいた「ゼロヒャク」の感覚…広島時代からの記者だけが知る“復活の兆し”<Number Web> photograph by Yuki Yamada

MLB10年目を迎えた前田。今シーズンは試行錯誤の連続だった

「ゼロヒャク」15年前の原点

 マイナー契約後は段階的に球数を増やし、トータル90球をメドに5~6イニングをマネジメントするピッチングを再構築した。カブスをオプトアウトする前まで7度の先発登板は、いずれも5イニング以上を投げた。そんな中で蘇ったのがあの、「ゼロヒャク」の感覚だった。

「ゼロヒャク」−−。その独特な感覚を説明するには、21歳のマエケンまでさかのぼらなければいけない。まだ若手有望株だったカープ時代のことだ。

 2010年4月8日。神宮でのヤクルト戦。初めて開幕投手を務めて勝利を挙げ、迎えたシーズン2度目の先発登板だった。3回2死で迎えたヤクルト・田中浩康に投じた「置きにいった」ストレート。カウント2ボール2ストライクから145kmが外角低めに決まった。

復活のカギを握る「ゼロから100」の感覚

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 力を抜いて、四球を避け、ストライクを取りにいったボール。

「ストライクを置きにいったのに自分でも驚くようなボールがいった。“つかんだ”瞬間でしたね」

 無意識のうちにリラックスした状態から、リリースに力を集中する投法につながっていた。前田は、力を入れる瞬間を「ゼロから100」と表現し、長らく先発投手として自身のピッチングの生命線としてきた。

 この15年前の記憶と感覚が今、マエケンの完全復活のカギになっている。

 原点を思い出すことができたのも、こだわりが強い先発投手に戻ったからこそ。リリーフのままなら、1イニングを全力投球しなければならない、という意識が強すぎて「ゼロヒャク」の感覚は戻らなかったかもしれない。

“最悪の結果”に見えた光明

 取り戻した感覚に加え、前田の精神面をサポートしたカブス首脳陣のバックアップもあった。データに基づき、右腕の自信を回復させようと、多くのスタッフがきめ細やかに声をかけていた。

【次ページ】 批判の言葉「極力、見ないようにしているんですけど…」

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