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「カーリング選手で大学生で人妻に」4度目の五輪挑戦…吉田知那美(34歳)が明かすカーリングへの思い「流しのコーチっていいかも…押しかけ先生みたいな」
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竹田聡一郎Soichiro Takeda
photograph bySoichiro Takeda
posted2025/08/23 11:01
4度目の五輪出場を目指すロコ・ソラーレの吉田知那美(34歳)がカーリングへの思いと将来の展望を明かした
JDとはジェームス・ダグラス・リンド。カナダ・アルバータ生まれのカーリングコーチだ。2013年に北海道女子カーリングアカデミーのヘッドコーチとして来日し、以降、JCA(日本カーリング協会)ナショナルコーチを経て、ロコ・ソラーレの名参謀として現在に至る。JDの愛称もすっかり定着したラーメン好きのナイスガイだ。
「昨シーズン、男子のオーストリア代表が23年ぶりに世界選手権に出場してニュースになったのですが、世界選手権で彼らがすごく楽しそうにプレーしている姿が印象的でした。私たちは去年、女子のナショナルチームとスウェーデンで対戦する機会があって、彼女たちは『一生懸命練習しているんですけれど、勝つのは難しい。どうしたら勝てるようになるんだろう』と話をしてくれて。『ああ、JDに教わり始めた頃、私もこういう感じだったのかな』って思いました。当時は世界選手権よりも五輪よりも『どうやったらドローはちゃんと決まるんだろう』というレベルだったのですが、JDが丁寧に理論と練習方法を教えてくれて、それさえ分かれば私だってドローを決められる人になれた」
「流しのカーリングコーチ」はいいかも
そこで「あ、それいいな」と吉田の頭をよぎったのは「流しのカーリングコーチ」だという。演歌が好きで、結婚して多拠点生活を送る吉田ならではのワードセンスだが、日本のカーリングはかつて「カナダから30年遅れている」と言われていた。その遅れた時計の針を進めるためにJDは来日したが、それが原型だ。オーストリアをはじめ、スペインやフランス。カーリングは途上にあるが、スポーツを文化として捉えている下地とポテンシャルを兼ね備えている国や地域は多い。
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「強いチームのコーチより、10年前の日本のように世界に肩を並べるための強化に取り組んでいる国に指導普及するのは楽しそうだし、自分に合っているかもしれない。そこを強くしに勝手に行く。押しかけ先生みたいな。ただの思いつきですけどね」
本人が認めるとおり、それはシンプルな思いつきだ。しかし、吉田はその「いつかなってみたい」という思いつきや願いを起点に、いくつもの脱皮を繰り返してきた。流しのコーチを経ていつかその莫大な経験を日本に還元する。そんな日は来るのだろうか。
「どうなんでしょうね。でも今はロコで最高に楽しいカーリングをしています。楽しい日々を過ごしながら勝ちたいと欲張ってもいます。先のことはわからないけど、今シーズン、カーリング選手としてまた一皮剥けたいですね」
セミとヘビとチナミ。抜け殻がまた生まれるかもしれない。
<前編から続く>


