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「幼い子どもと離れて…本当につらかった」女子カーリング小笠原歩さんに聞く“アスリート生活と子育ては両立できる?”「完璧主義をやめました」
posted2023/08/21 17:29
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
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日本のカーリングの歴史は、2006年のトリノ・オリンピックから変わった。
そのとき、女子日本代表のスキップを務めていたのが小笠原歩さんだ。
小笠原さんは、2002年のソルトレイクシティ、トリノ、そして2014年のソチと三大会に出場し、ソチでは開会式で日本選手団の旗手を務めた。
現在はというと、「世界を目指さないだけでこの競技に引退はないと思っています」と微笑みながら語るが、日本カーリング協会理事、北海道協会副会長、どうぎんカーリングスタジアム名誉館長に加え、 ナショナルコーチを務める。
「ナショナルコーチは、選抜制代表チームや強化チームのサポート、代表チームの帯同を担当します。普段から活動している特定のチームを担当するわけではなくて、代表になったチームにつきます。昨シーズンでいうと、私は混合ダブルス(世界選手権で松村千秋・谷田康真ペアが2位)、そしてジュニア日本代表(昨シーズンのみ選抜)と、ワールドユニバーシティゲームズ日本代表を担当しました」
「つらかった…」幼い子どもを預け、2カ月カナダへ
コーチング以外でも、国内外での強化合宿に帯同、計画、運営などにも携わり、一方で、研修、講習などではスピーカーを務め、多忙を極めている様子。そして中学生の母親でもある。ただし、いまの状態になるまでには、当然のことながら葛藤もあったという。
「2009年に子どもが生まれて、現役に復帰したのが2011年です。復帰してすぐに2カ月くらいのカナダへの遠征があったんですよ。子どもを実家に預けてきたんですが、この時がつらかったのなんの……」
小さな子どもを預けること。それは誰にとっても葛藤の連続である。泣いている子どもの声を背中に聞きながら、働きに向かわなければならない。しかも、小笠原さんの場合は、カナダに行ってしまっているから、すぐに会うこともできない。そこには罪悪感も生まれる。
「散らかさないで!」完璧主義をやめた
それでも、親も子も環境に慣れる。小笠原さんも、遠征を繰り返すうちに、子どもには子どもの世界があることを理解したという。