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佐藤輝明ら「即戦力の英才教育」で阪神は強くなったが…ヤクルトの「少数精鋭・はめ込み型」育成のメリットと限界を比較すると?
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/04 17:04
佐藤輝明ら大卒即戦力選手のドラフト指名の成功が、今季の独走を大きく支えている。その育成方針に似た球団とは?
ドラフト戦略が成否を分ける少数精鋭育成
ただ、少数精鋭の場合、ドラフト戦略がうまくいかなければ、チーム強化はままならない。
ヤクルトの場合、2024年ドラフトの本指名で5人を指名しているが、内野手は同4位の田中陽翔(健大高崎高)、外野手は同2位のモイセエフ・ニキータ(豊川高)と高卒の2人で、即戦力とは言いがたい。2023年の本指名でも、内野手は5位指名した独立リーグ・BCリーグ新潟の伊藤琉偉のみ。2022年も、3位で外野手の澤井廉(中京大)、5位で内野手の北村恵吾(中大)を指名しているが、2025年の時点で、いずれもレギュラー級にまで成長したとは言いがたい。
さらに2023年のドラフト1位・西舘昂汰(専大)はルーキーイヤーの9月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、2025年は育成契約。2024年ドラフト1位の中村優斗(愛知工業大)も、2025年7月に初勝利を挙げたばかりと、期待通りの働きには至っていない。
世代交代が停滞する2025年のヤクルト
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ここに2025年は、上半身のコンディション不良が続いている村上をはじめ、塩見泰隆(左膝前十字靱帯手術)、長岡秀樹(右膝後十字靱帯損傷)、サンタナ(右前腕部打撲)、茂木栄五郎(左膝半月板手術)と、主力級に続々と故障者が出てしまうと、戦力層がそもそも薄い状態でのチーム作りゆえ、その穴埋めにも四苦八苦してしまう。山田は2025年がプロ15年目で33歳、村上は2025年オフにはポスティング・システムを活用してのメジャー挑戦がささやかれているだけに、彼らに続く戦力の台頭は急務だが、その“転換のスピード”が停滞している感がある。
ゆえに、2021、22年にセ・リーグ連覇を果たしながら、23、24年はいずれも5位、2025年は前半戦を終えて最下位と低迷しているのも、酷な言い方をすれば、必然の流れと言わざるを得ない。
〈つづく〉

