プロ野球PRESSBACK NUMBER
佐藤輝明ら「即戦力の英才教育」で阪神は強くなったが…ヤクルトの「少数精鋭・はめ込み型」育成のメリットと限界を比較すると?
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/04 17:04
佐藤輝明ら大卒即戦力選手のドラフト指名の成功が、今季の独走を大きく支えている。その育成方針に似た球団とは?
2023年、15年ぶりに阪神監督に復帰、2シーズンにわたって指揮を執った岡田彰布が、かつての2軍監督時代に育成の方針として強調していたのは「差別はアカンけど、区別はする」。すべての選手に、できるだけ平等に実戦機会を与え、練習環境も提供する。その大前提のもとでの「区別」とは、1番打者と4番打者では、鍛えるべきポイントもグラウンドで求められるパフォーマンスも違う。ならば、将来の4番打者と、つなぎ役の2番打者に対し、与える指示も、練習内容も違って当然なのだ。
“はめ込み型”英才教育の球団
この選手は「未来の主砲」と見込んだら、英才教育を行う。
この“はめ込み型”での成功で代表的なのが、ヤクルトと日本ハムの2球団だろう。
ADVERTISEMENT
ヤクルトは少数精鋭ゆえに、いわば「区別」して、将来に想定される打順や守備位置にはめ込んだ上で、重点的に育てていくのだ。
山田、村上の成功
2022年が高卒3年目、20歳の長岡秀樹は、セの遊撃手部門でゴールデングラブ賞を獲得した。山田哲人は、高卒1年目の2011年にファームで全114試合出場を果たした後、中日とのCSファイナルステージ第2戦で、高卒新人野手としてCS史上初となる先発出場を果たしている。山田にとっては、その大舞台が、異例の“1軍デビュー”だった。
打率3割2分9厘、本塁打38本、盗塁34で山田が初の「トリプルスリー」を達成したのはプロ5年目。その2015年にヤクルトはリーグ優勝している。
この山田に続いて、2017年のドラフト1位・村上宗隆が台頭してきた。九州学院の捕手だった村上は、早稲田実・清宮幸太郎(同年日本ハムドラフト1位)の“外れ1位”。捕手からサードへコンバートすると、2年目に1軍で全143試合出場。36本塁打、96打点をマークしたが、184三振はセ・リーグのワースト記録。しかし、その“我慢”は、村上を軸にしたチームを作って強くするという、球団としての揺るぎない方針の裏返し。2021年(令和3年)の日本一、さらには村上が三冠王に輝いた2022年(令和4年)のセ・リーグ連覇という、大きな果実がもたらされている。


