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阪神はなぜ掛布雅之以降“高卒野手”が育たない? 名スカウトがため息「阪神の1位はしんどい…(大卒の)鳥谷敬のような強さは高校生には難しいよ」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/04 17:03
「ミスタータイガース」掛布雅之以来、高卒野手で掛布に迫る成長を見せた選手は現れていないのが実情だ
「そういう話を聞いたら文句なしだよね。堂々としていたね、振る舞いが。要は、自分がそこまでの選手じゃないと思っている。名前はマスコミで上がって、そういうのは耳に入るんだけど、自分はそこまでの選手じゃないと思っている。だから、練習しなきゃ、絶対にダメだと、それを最後の最後まで貫いたわけですよ。
プロに入ってからも、岡田監督だから、早大ラインだから、力がなくても使ってもらっているとか言われて、藤本(敦士=兵庫/デュプロ/00年7位)なんかも、へそを曲げちゃうわけだ、レギュラーをやっと獲ったと思ったのにね。でも、その藤本を黙らせたわけでしょ。『あれだけ練習するから勝てねえよ、アイツには』となったわけだ」
阪神の環境で己を見失わないためには
2016年(平成28年)に鳥谷が出版した『キャプテンシー』(角川新書)から抜粋する。
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アマチュア時代はプレッシャーを感じることもあった。(中略)
「このプレッシャーに打ち勝つためにはどうすればいいのか」
僕は考えた。そして決めた。
「練習しよう」
徹底的に練習した。練習を続けていると、こう考えられるようになった。
「これだけ練習したのだから、あとは試合でどうなろうと、その結果を受け入れよう」
大学生だった頃から、この“領域”に達していたのだ。そうした姿勢と思考を持っていることが、阪神のような人気チームで、自らを見失わない支柱になる。
「そういう強さとか、何かを特に持っている。高校生にそれを、というのはすごく難しいよね。本当なら藤浪あたりは、1年目から成績を残していたわけだから、ずっと行ってもらわないと困るんだけど、もうエスカレーターは下りだからね。阪神の1位って、しんどいといえばしんどいよ。それを超えていかなきゃならない。そういう声をシャットアウトできるようなヤツでないとね」
その“難しい環境”は、育成面にも大きく影響していると言わざるを得ない。
〈つづく〉

