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野球クロスロードBACK NUMBER
「厳しい道を選んだほうがいい」イチローから助言も…「ハンパなく勉強して」アスレチックスからドラフト指名の21歳が“アメリカ進学”を選んだナゼ
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/17 17:02
アスレチックスからドラフト指名を受けた武元一輝。智弁和歌山高からハワイ大へ進学したが、異国での挑戦は多くの困難もあったという
「今の一輝はプロに行っても一軍レベルには届かない。ハワイ大学は技術面も精神面でも伸び伸びできる環境だと思うし、今よりもっと輝けると思う。一輝にはほとんどの人が挑戦したことがない道を進んでもらいたい」
あまりにも予想外の展開だったこともあり、このとき武元の脳裏には、イチローから授かった座右の銘は降りていなかった。しかし、アメリカの大学という選択肢が皆無だったなか心を揺さぶられたのは、監督からの「道」という言葉があったことも確かだった。
「人と違う道で、自分を強くしたい」
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意志を示した武元は、家族と中谷から「必ずメジャーに行け」と背中を押され、正式にハワイ大への進学を目指した。
ユニフォームを着て野球をする前から、武元の過酷な挑戦は始まっていた。
最低基準の語学力が必須のアメリカの大学入試において、英語がまったくできなかった武元は一から勉強することが必要となった。
「ほんと、やばいっすよ!」
顔を歪ませながら教えてくれた、受験勉強に励んでいたおよそ1カ月半のタイムスケジュールはこうだ。
「食事と睡眠以外は猛勉強」の毎日
8時に起床して朝食を摂る。9時から10時半までオンラインで授業や小テストを受け、英文をスムーズにタイピングするためにパソコンの操作を指に馴染ませる。昼食を済ませた12時から17時までは、語学学校でみっちりと勉学に精を出す。そして、夕食を噛みしめる間もなく19時から2時間、家庭教師の個人レッスンが待っている。それらが終わっても、膨大な宿題をこなさなければならないため、就寝は0時を回っていたという。
食事と睡眠時間以外は机に向かう。それまで野球に打ち込んできた武元が、「ハンパなかった」と連呼しながら人生初の猛勉強をしてきた自分を省みる。
「受かろうと思ってやったんですけど『きついんちゃうかぁ……ちゃんとやらないと』と思って、合格するためにとにかく勉強しまくって。何時間やったかわからないくらいハンパなく勉強したんですけど、それも『アメリカに行く』って自分を律して、厳しくできた結果かなって思っています」

