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「厳しい道を選んだほうがいい」イチローから助言も…「ハンパなく勉強して」アスレチックスからドラフト指名の21歳が“アメリカ進学”を選んだナゼ
posted2025/07/17 17:02
アスレチックスからドラフト指名を受けた武元一輝。智弁和歌山高からハワイ大へ進学したが、異国での挑戦は多くの困難もあったという
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
2020年に智弁和歌山高に入学した当初の武元は、典型的なお山の大将だった。
紅白戦で3年生の主戦ピッチャーからホームランを放つなど、すぐに力を発揮できていたことから不遜となる。先輩から注意されても「何がいけないんですか?」と怪訝な態度を見せる場面も散見され、その度に監督の中谷仁から叱責され、チームメートからも言動を戒められていたのだという。
武元が至らなかった自分を回顧する。
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「1年生のときは、天狗の状態で『敵なし』くらいに思っていて。自分のことしか考えていませんでした」
ただ、だからといって傍若無人に場をかき乱していたわけではない。
同級生が振り返る「武元評」
そこにはどこか憎めない側面もあるのだと、にやにやしながら教えてくれたのが、高校でバッテリーを組んでいた同級生の渡部海である。
「監督から怒られて、教わって、よくなったと思ったら、次の日にはちょっと違うことをやってまた怒られる、みたいな。そういうことが結構あったので(笑)。高校時代のあいつは変わっていたというか、怒られキャラだったのは間違いないです」
放埓というより、奔放。そんな振る舞いに見え隠れするのが、武元が抱えていた悩みである。1年時は特にそうだった。
他の指と比べて中指がひときわ長く、そのせいでボールにうまく力を加えられず、ストレートがナチュラルにスライドしてしまう“真っスラ”に苦心していた。きれいな回転で投げなければ、と思えば思うほど右腕は萎縮し、本来の力のあるスピードボールが失われ、自信が持てなくなっていく。

