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「厳しい道を選んだほうがいい」イチローから助言も…「ハンパなく勉強して」アスレチックスからドラフト指名の21歳が“アメリカ進学”を選んだナゼ
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/17 17:02
アスレチックスからドラフト指名を受けた武元一輝。智弁和歌山高からハワイ大へ進学したが、異国での挑戦は多くの困難もあったという
そして、武元はハワイ大に合格してから、より自分を律することの意味を痛感する。
文武両道に重きを置くNCAA所属の大学での生存競争は苛酷だ。授業は月曜から金曜までみっちり入っており、武元のような外国人を悩ませるのがプレゼンテーションだという。資料を作成して説明するだけならまだしも、引用元など相手から聞かれたことに対し明確に答えられないと及第点を与えられない。
なにより厳しい現実を突きつけられるのが野球である。メジャーリーグのようにロースターが設けられており、40人の枠に入れなければチームどころか大学にすらいられなくなる。なかには“レッドシャツ”と呼ばれる、練習生のような立場で1年間の猶予期間をもらえる選手もいるが、そこにすら入れなかった場合は野球を辞める者もいるのだという。
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「アメリカって自分に甘くすれば甘くやれるんですけど、実力主義なんで結果にすぐ出るというか。そういう生活のなかで自分と向き合う時間は増えたと思います」
この弱肉強食の世界で武元がハワイ大で生き残り、主力として立ち位置を築けた背景にも、重要な出会いがあった。
新たなコーチとの出会いもプラスに
大学生活2年目を迎えた24年5月。元アメリカンフットボール選手で、ハワイ在住のパフォーマンスコーチとして活動している栗原嵩に師事するようになってから、武元のなかに大きな変化が生まれた。
「それまで、体の一つひとつの動きを理解できていなかったんですけど、栗原さんからいろいろ学んで。運動力学を勉強することによって、『体のどこを動かせば、この筋肉が動く』とか『体のどこを支点にして投げればいいのか』とかを考えられるようになりました」
身体を探求していった成果は、最速154キロと数字にも表れる。さらには、ピッチングへの深い解釈にも連動していった。
アメリカでは大学でもパワーヒッターが顔を揃える。最初は真っ向勝負を挑むが、打たれることもある。そうなれば次は違うボールで様子を窺うこともあるし、打たれても相手の反応次第では「同じボールで攻めたら違う結果になるかもしれない」と再度、試す。こういった分析によって、精神面が鍛えられていったのだと、武元は手応えをにじませた。

