甲子園の風BACK NUMBER

“沖縄尚学に大敗”エナジックの誤算「太ももパンパン…まるで江夏豊」最速150km“2年生の怪物左腕”末吉良丞とは何者か? 名将も脱帽「相手が一枚上」 

text by

松永多佳倫

松永多佳倫Takarin Matsunaga

PROFILE

photograph byTakarin Matsunaga

posted2025/07/17 11:02

“沖縄尚学に大敗”エナジックの誤算「太ももパンパン…まるで江夏豊」最速150km“2年生の怪物左腕”末吉良丞とは何者か? 名将も脱帽「相手が一枚上」<Number Web> photograph by Takarin Matsunaga

最速150km左腕の末吉良丞(沖縄尚学)。2年生ながらエナジックの強力打線を圧倒し、甲子園への切符を手にした

 島袋洋奨や宮城大弥を知る県内の関係者も、口々に「沖縄出身でここまで怪物感のあるピッチャーは見たことがない」と話すほど、誰もがスケールの大きさを感じていた。じつはセンバツの時点では本調子ではなく、6月の東洋大姫路戦(招待試合)での7回無失点7奪三振の快投から、その怪物性が萌芽しだしたようだ。

 エナジックとの決勝戦を1失点、9奪三振、被安打4の138球で完投した末吉は、数字以上のインパクトを残して沖縄尚学を甲子園に導いた。今大会通算では29イニングを投げて1失点、40奪三振の防御率0.31。最速150kmの剛球と精度の高い変化球を武器に、世代ナンバーワン左腕に躍り出たと言ってもいいのではないか。

「すごいですよ。相手が一枚上」名将・神谷監督も脱帽

 エナジックの神谷監督が敗戦の弁を語った。

ADVERTISEMENT

「末吉投手が後半バテるかなと思ったんだけど、バテずにいいボールを放っていた。相当練習を積んでいると思います。すごいですよ。相手が一枚上。スピードが落ちずに要所要所を締めてきて、上手いピッチングをする。うちの選手は力みすぎというか、ノリが良すぎてはじけすぎて、もっと平常心でやってくれればね。点を取られて焦ったんじゃないでしょうか」

 この試合エナジックは10個の四死球(うち死球が6)を出している。「はじけすぎ」と神谷監督が語ったように強気な攻めが空回りしてのものだろうが、これでは勝てない。

 神谷監督が標榜するノーサイン野球では、選手間の信頼のもとに戦術を決め、常に考える野球を実践することに主眼が置かれている。そこに「エンジョイ」の要素を加味し、選手たちがリラックスしながら平常心で試合に臨めれば、力を最大限に発揮することができる……という考え方だ。

 初回、エナジックは理想的な展開で先制点を挙げた。ただ、そこに見たこともない怪物級の出力が襲いかかると、歯が立たなかった。それでも、まだまだ伸びしろはある。さらなる緻密さと闘志に裏打ちされた野球へと進化を遂げていくために、この怪物との遭遇は必然だったのかもしれない。答えは、そう遠くない日に出るだろう。

関連記事

BACK 1 2 3
#沖縄尚学高校
#末吉良丞
#エナジックスポーツ高等学院
#神谷嘉宗
#イーマン琉海
#江夏豊
#大野倫

高校野球の前後の記事

ページトップ