甲子園の風BACK NUMBER
“沖縄尚学に大敗”エナジックの誤算「太ももパンパン…まるで江夏豊」最速150km“2年生の怪物左腕”末吉良丞とは何者か? 名将も脱帽「相手が一枚上」
posted2025/07/17 11:02

最速150km左腕の末吉良丞(沖縄尚学)。2年生ながらエナジックの強力打線を圧倒し、甲子園への切符を手にした
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph by
Takarin Matsunaga
「末吉を見たか!?」
思わず、こう叫びたくなるほどの衝撃を受けた。
「太ももパンパンの怪物候補」2年生の150km左腕
7月13日、沖縄では全国でもっとも早く夏の県大会決勝が行われ、創設4年目のエナジックスポーツ高等学院と強豪・沖縄尚学という春のセンバツに出場した両校が顔を合わせた。
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今春のセンバツで、エナジックは風変わりな校名と「ノーサイン野球」が話題を集めた。公約通り創部3年で甲子園に出場させた名将・神谷嘉宗監督に率いられ、夏の県大会も2回戦での18対0を皮切りに、3回戦は八重山に2対0、準々決勝は名護に11対1、準決勝は宜野座に5対3と順調に勝ち上がった。
センバツの勢いを駆って、新興勢力のエナジックが夏の甲子園にも足を踏み入れるのか。そんな注目を集めた決勝戦は、意外な形で幕を閉じた。
1対9。沖縄尚学になすすべもなく完敗を喫したのだ。
試合は“怪物候補”といえるサウスポーの独壇場だった。
沖縄尚学2年生、最速150km左腕の末吉良丞。身長175cm、体重89kgの体はとにかく分厚い。とりわけパンパンに張り詰めた太ももなど下半身の迫力は半端ではなく、体つきだけを見ればプロの一軍で投げていてもおかしくないと感じるほどだ。
末吉は準決勝まで20イニングを無失点、奪三振31と“無双状態”のまま先発マウンドに上がった。
エナジックは、そんな末吉の立ち上がりを攻め立てる。U-18日本代表候補で俊足巧打の先頭打者・イーマン琉海が一、二塁間を破るヒットで出塁し、続く二番・宮里凱もヒットで無死一、二塁。続く三番・砂川誠吾は三振に倒れるも、四番でピッチャーの久高颯のセカンドゴロがフィルダースチョイスを誘って満塁となり、五番・平良章伍のセカンドゴロの間にランナーが生還した。21イニング目で大会初失点を喫した末吉は、初回だけで31球を投じていた。
エナジックとしては作戦通りだった。剛腕・末吉に球数を投げさせることに焦点を当て、粘り強くゴロを転がしていく。その戦術が初回、もろに的中した。
しかし、初回だけだった。