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「俺には情はあるけど、非情もあるからな!」《闘将》星野仙一監督の“アメとムチ”とは…広澤克実が語る3人の名将「うちの息子の病気のことまで」
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長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byJIJI PRESS(2)
posted2025/07/16 17:04
故障から自分の打撃を見失っていた広澤だが、星野監督時代には代打中心ながら復調する。広澤が見た星野の恐るべき闘志とは……?
「オレには情もあるけど、非情もある!」
監督初年度となった02年は、開幕7連勝を飾るスタートダッシュを見せたものの、夏場以降に失速。最終的には4位に終わった。チームの勢いが減じていく中で、選手たちを前に星野が放ったひと言が印象的だと広澤は言う。
「どんどん負けが込んでいた8月のことだったと思うけど、星野さんは選手たちの前で、“オレには情はあるよ。だけど、同時に非情も持っているからな!”と言って、部屋から出ていったことがあったんです。僕らはみんな、“アワワワ……”って、大慌てですよ(笑)」
この年のオフ、星野はまさに有言実行で、24選手の大規模な入れ替えを断行する。金本知憲、伊良部秀輝、下柳剛らを獲得、翌年就任2年目にしてリーグ制覇を実現した。まさに「非情な血の入れ替え」を主導し、見事に結果を残したのである。
名将たちの「情と非情」とは
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星野が持つ「情と非情」は、野村、長嶋のケースではどうなのだろう? 質問を投げかけると、広澤は「監督というのは……」と切り出した。
「監督というのは3つのパターンにわけられると思います。まずは“情を以って指導する監督”。そして、“理を以って統率する監督”、最後は“恐怖を以って指揮する監督”です。それで言うと、野村さんは“理と情の監督”でした。そして、星野さんは当然“情と恐怖の監督”ということになります」
残る一人、長嶋茂雄はどうなのか? 続く答えを待っていると、「長嶋さんはどうかな……?」と言ったまま、しばらくの間考えて広澤は言った。
「長嶋さんか……、長嶋監督はそのどれにも当てはまらないな(笑)。情でもないし、理でもないし、ましてや恐怖でもない。う~ん……、やっぱり長嶋さんは長嶋さんであって、太陽のように、この世に二つとない唯一の存在なんですよ」

