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「バレーボールが楽しい」女子バレー佐藤淑乃と和田由紀子は“新たなエース”になれる? 古賀紗理那も信頼した“里さん”が語る急成長の秘密
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byJVA/AFLO SPORT
posted2025/07/12 11:06
新生日本代表で存在感を発揮する和田由紀子(13番)と佐藤淑乃(26番)。ともに23歳、同じNECレッドロケッツ川崎でプレーする
チーム1、2位の得点を叩き出し、新しい日本代表の象徴とも言うべき佐藤と和田。その活躍の背景を語るうえで、欠かせぬ“フィクサー”とも言うべき存在がいる。2人が所属するNECレッドロケッツ川崎の強化戦略コーディネーター兼パフォーマンスアーキテクトの里大輔氏だ。
陸上競技選手としての経歴を持ち、野球やラグビーなど、さまざまな競技に携わる里氏が川崎で指導を始めたのは2021年。これまでは抽象的に伝えられてきた動きの一つ一つを分解し、原理原則を言葉で伝え、その実行のために何が必要かを説いてきた。その成果は顕著で、チームの国内リーグ連覇に貢献し、パリ五輪で現役引退した古賀紗理那も「里さんのおかげで自分のパフォーマンスが上がった」と何度も口にするのを聞いてきた。
そんな里氏が佐藤と和田の指導を本格的にスタートさせたのが2024/25シーズンだった。
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すでにキャリアや知識、経験があって「最後に磨くだけの段階だった」という古賀に対し、佐藤はルーキーで、和田はJTマーヴェラス(現・大阪マーヴェラス)から移籍加入した初年度。両者ともにイチから、むしろゼロからのスタートだった。
ほぼ“無”の状態からの吸収
特に里氏が「大丈夫か?と思う段階から始まった」と振り返るのが佐藤だ。
「真面目に取り組むのですが、フィジカルにおいては強さも速さもない。しなやかさがあるかといえばそれもない。バランスはいいかもしれないけれど一つ一つのポイントが小さい。手探りな感覚で動いている印象でした」
だが、ほぼ“無”の状態がプラスに働いた。
求められる「強さ」「速さ」「巧みさ」とは何か。知らないことを知ってもらう作業から始めるうち、佐藤自身がもともと持っていた感覚と知識が重なる。ジャンプやスイングも細かく動きを分解し、できていないことを提示しながら必要な課題を与え、一つずつクリアさせる。その作業を積み重ねる中で、力強さやスピードが身につき、プレーも大きく変化した。



