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完勝のマルク・マルケスに大ブーイング! 「スポーツマンシップに欠ける」いまだ愚行を続ける“ロッシ崇拝者”に関係者は激おこ!!
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/06/25 17:00
ドゥカティで完璧な勝利を挙げたマルケスだが、イタリアのファンから届いたのはブーイングだった
ロレンソはヤマハでロッシとチームメートであり、ロッシの最大のライバルとしてタイトル獲得に立ちはだかった。同じチームでありながらピットの中に壁が出来るほどの不仲となり、ロッシはイタリア人特有の対決の構図を利用してライバルにプレッシャーをかけ続けた。
それは2017年にイタリアのバイクメーカー、ドゥカティに乗り換えても変わらず、この年のサンマリノGPでは、トップを走っていたロレンソが転倒したときにロッシファンから拍手喝采を浴びた。転倒したライダーが立ち上がったり、再スタートしたときにガンバレという意味の拍手はあるが、こうした心ない拍手喝采と大歓声は見たことがなかった。
当時、ドゥカティのライダーだったイタリア人のアンドレア・ドビツィオーゾは、こうしたスポーツマンシップに欠けるロッシファンに対し「イタリアのファンと一緒にしないでほしい」とコメントしたほどだった。
歴史に残るロッシのキック事件
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マルケスは子供のころから14歳年上のロッシの大ファンであり、MotoGPに昇格してからの2年間は良好な関係だった。しかし15年シーズン、ウインターテストから好調で若くて強いマルケスに勝つチャンスが到来したロッシは、「今年はタイトルを獲得するチャンス。そのためにはマルケスを倒す」と開幕前の会見でコメント。その言葉通り、マルケスとの接近戦が続いた。その結果、マルケスにとっては「やられた」感の強い接触事故が続き、タイトル争いは絶望的となって次第に二人の仲は悪くなっていく。そして、この二人の関係を決定的にしたのは、マレーシアGPのロッシのキック事件だった。
レース中に絡んだマルケスにロッシが蹴りを浴びせて転倒させた。この事件でロッシは最終戦バレンシアGPでグリッドが最後尾に降格となるペナルティが決まり、最終戦では4位でフィニッシュ。一方、ロッシを7点差で追っていたロレンソがPPスタートで優勝し、逆転でタイトルを獲得した。
以来マルケスは、ロッシのタイトル獲得を奪ったにっくき男としてロッシファンの憎悪の対象となり、イタリアで開催されるイタリアGPとサンマリノGPでは威圧的なブーイングが発せられるようになった。

