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強すぎておもしろくない!? 「左回り無双」で完全復活のマルク・マルケスを止めるのは、実弟のアレックスか低迷中のバニャイアか?
posted2025/06/11 11:08

アラゴンGPで圧勝し、スペイン国旗を掲げてウイニングランするマルク・マルケス
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遠藤智Satoshi Endo
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Satoshi Endo
第8戦アラゴンGPで、マルク・マルケスがフリー走行、予選、スプリント、決勝レースのすべてをトップで制し今季4勝目を挙げた。舞台となったモーターランドアラゴンはマルクが得意とするサーキットのひとつで、2013年にMotoGPクラスに参戦してから7勝目となった。ドゥカティに乗り換えてからは2年連続でライバルを圧倒したことになる。
あまりにも速くて強く、ファンからは「おもしろくない」と不満の声があがっている。マルクが期待されるレースは抜きつ抜かれつの熾烈な戦いで、最後の最後まで大接戦となるバトル。だが最強マシンを手に入れたマルケスがスタートを決めてトップに浮上してしまったら、「退屈なレース」になってしまうのは仕方のないところである。
過去3戦、転倒や不安定な天候などで決勝での勝利を逃しているマルクは、「こういうレースがしたかったんだ。常にレースをコントロールして、いつプッシュするか、2位との距離をどうするかを決める。スプリントもそうだったが、決勝レースでもバイクは終盤にかけて乗りやすくなった」とコメント。23周で行われたレースのラスト3周でファステストラップを刻み、最終ラップはそれまでより2秒もタイムを落とす「楽勝劇」だった。
ツーリングのごとき圧勝劇
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レースが終わってみれば、2位になった「青マルケス」こと弟のアレックスに1.107秒、3位のフランチェスコ・バニャイアに2.029秒の差をつけた。数字的には圧倒的なリードではなかったが、2位以下の全力走行に対して「赤マルケス」ことマルクの走りはツーリングしているようでもあった。マルクの勝利を確信したファンの中には、帰り道の渋滞を避けるためにレース中に席を立って帰って行く姿も多く見られた。
それもそうだろうと思う。昨年、ホンダからドゥカティに乗り換えて移籍後初優勝を遂げたアラゴンGPでは、ドゥカティの「傑作マシン」と言われる2024年型に乗るホルヘ・マルティンを相手に、パフォーマンスの劣る23年型で優勝した。そのマルティンとドゥカティワークスのシートを争い勝利したマルクは今季最新型に乗ってライバルを圧倒してきたが、いくら得意とするサーキットだとしても「強すぎる」という言葉しかなかった。