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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「大谷翔平に当てたから」ではない? 報復死球にドジャース監督が激怒した“日本人が知らない”「本当のワケ」…MLB“暗黙ルール”の本質とは
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byGetty Images
posted2025/06/20 17:02
サンディエゴ・パドレス戦で右ふとももに死球を受け、痛みをこらえるロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平。その後も両軍による「報復合戦」は続いた
もちろんこの行為はMLB側も重く見て、ケリーには8試合の出場停止処分が下っている。だが、ファンは彼をヒーローとして迎え、Tシャツを作り、グッズまで販売した。
球団公式ではなかったが、ドジャースのクラブハウスでもそのTシャツが着用され、話題を呼んだ。「ルールを破った連中に罰を与えた男」として、ケリーは一種の英雄となったのだ。
選手の安全確保やイメージ重視の流れから、リーグも罰則を強化し、形式上は“禁止された行為”となっているが、報復文化は完全には消えていない。表向きには否定されながらも、「やる方も、やられる方も納得している」空気が残っているのが今のMLBだ。
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今回の一件にも、そうした空気が濃厚に漂っていた。
発端は3回表のタティス・ジュニアへの死球――ではなく、その前日だった。現地の月曜の試合で、ドジャースのアンディ・パヘスがパドレスの先発ディラン・シースから死球を受け、不満をあらわにしていた。
「二塁ベース上で動いていたのを、サインを盗んでいたと思われたのかもしれない。スライダーをあれほど正確にコーナーに投げられるのに、ストライクゾーン内の速球をインコースにミスするなんてありえない」
試合後、パヘスはそう語り、怒りをにじませた
マチャドは「狙うならもっと大物を選ぶ」
一方でパドレスのマニー・マチャドは「狙うならパヘスじゃない。あっちには大物がたくさんいる。もし誰かを狙うなら、もっと別の選手を選ぶさ」とも発言している。
その言葉通り、翌日には“その大物”が狙われた。前述のように3回表、ドジャースのルー・トリビーノがタティス・ジュニアに死球。3回裏にはパドレスのバスケスが大谷に93マイルの速球をぶつけた。ロバーツ監督が抗議し、退場となるには十分すぎる展開だった。
ただし、日本では誤解されがちだが、実はロバーツの怒りは「報復文化」そのものに向けられたものではなかった。そこには日米の微妙なカルチャーギャップが存在する。
<次回へつづく>

