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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「長嶋さんの服は亜希子さんが選んで…」長嶋茂雄夫妻と2週間の“仕事旅行”…元フジテレビアナが見た「長嶋さんと亜希子さんの仲睦まじい関係」
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生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2025/06/19 11:02
巨人監督時代の長嶋茂雄
「長嶋さんは、『生は違うんですよ』と興奮されていましたが、ふたつのことを繰り返して話していました。ひとつは、野球というスポーツは、一個のボールを挟んでの男と男の戦いであるということ。もうひとつは、見る野球とやる野球はかなり違う、ということです。たとえば、『放送席から見た限りでは』とか、『ここから見ますと』といった言葉が多かった。おそらく、6年間巨人の監督を務めて、ダグアウトの中でしか知らないことがある、ということを長嶋さんは実感していたんじゃないでしょうか。だからこそ、そうした言葉が出てきたんだと思います」
ヤンキースの2勝リードで迎え、ロサンゼルスに舞台を移した第3戦では印象的なプレーがあった。
ドジャースが5対4でリードしていた8回表、ヤンキースは無死一塁。送りバントが予想される場面で、ヤンキースのボビー・マーサーは自らも生きようとセーフティバントを試みたが、これが小飛球に。ドジャースの三塁手、ロン・セイがダイビングキャッチし、一塁へ送球、ダブルプレーを完成させた。
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「試合後にヤンキースの監督ボブ・レモンは、『私も欲張りなので、セーフになるようなバントを狙わせた』とコメントしました。第4戦の実況でその話をすると、長嶋さんは『それは選手をかばって、そう話しているんだと思いますよ』と話したんです。その時に私は、監督として様々な経験を積んだ人の言葉だな、と思いました」
「エルメスのネクタイ…亜希子さんが選んだと思います」
このワールドシリーズは、ドジャースが2連敗のあと4連勝。長嶋にとってはうれしい結果となったが、岩佐さんにとって印象的だったのは、「長嶋夫妻」の仲睦まじい姿だった。
「亜希子夫人がニューヨーク、ロサンゼルス、そしてもう一度ニューヨークと帯同されていました。第2戦の日は、お昼にご夫妻でブロードウェイにミュージカルを見に行く予定になっていました。ところが、長嶋さんが『夜のゲームのために集中したい』ということで、友人に行くのを代わってもらっていました」
当時の写真を見ると、長嶋は白のジャケットや淡いブルーのシャツを着こなしている。岩佐さんによると、「(こういう衣装も)亜希子さんが選んでいたのでしょうね」。
中継がある日は、ホテルに戻ってくるのは日付が変わるころ。球場には行かず、ホテルで待っていた亜希子夫人は、いつもニコニコしてスタッフの労をねぎらっていたという。


