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野球のぼせもんBACK NUMBER
巨人から電撃トレードも「まだ福岡でホテル暮らし」秋広優人“その後”…練習を見た王貞治がソフトバンク現地記者に“本音”「おとなしい打ち方するね」
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/13 06:01
電撃トレード移籍から1カ月。ソフトバンク秋広優人の様子は?
今回のトレードについては、ソフトバンクの城島健司チーフ・ベースボール・オフィサーが「ジャイアンツさんからリチャード選手をどうしても獲得したいという話が先にありました」と経緯について明かしている。巨人が怪我で長期離脱となった岡本和真の穴埋めのために右の大砲かつ内野手を獲得したかったというのはすぐに理解できたが、だとしても巨人が交換要員としてまさか秋広を放出するとは予想外だった。
「ホームランより打率」でいいのか?
秋広は、新天地ソフトバンクでも高い期待値で迎えられている。
トレード成立から2日後の5月14日、福岡で入団会見に臨んだ。当初はその翌日に球団ファーム施設のHAWKSベースボールパーク筑後に赴いてモーションキャプチャーを用いた動作解析を行うことになっていた。だが、そこには現れず、予定が変わって15日からさっそく一軍に昇格。ナイターの西武戦(みずほPayPayドーム)に「6番レフト」でスタメンに名を連ねた。
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その日の第3打席、速い球足のゴロで二遊間を破るセンター前ヒットを放って移籍後初安打を記録。その後も「6番レフト」が定位置となり、5月25日のオリックス戦(鹿児島・平和リース)まで8試合連続でスタメン起用された。
その間の打撃成績は23打数6安打、打率2割6分1厘、本塁打0、打点0。出塁率こそ3割7分と優秀な数字を残していたが、平凡と言わざるを得ない成績だった。この次の試合から同じ外野手の近藤健介が戦列に復帰したことで、秋広はベンチを温めるようになった。
ホームランよりも率――。
自分のことは自分自身が一番よく分かっている。だから秋広の考えを他人が真っ向から否定するのはお門違いなのは承知の上だ。だがそれでも……。物足りない、のではない。“もったいない”と感じてしまうのだ。
王貞治が記者に明かした“本音”
試合の打撃はともかく、練習のフリー打撃の姿がもどかしく映ったのだ。そして、そんな思いを抱いた人物は筆者だけではなかった。
「大きい体のわりに、おとなしい打ち方をするね」
声の主は、王貞治球団会長だった。
秋広が新天地デビューを果たした5月15日の試合前練習中に取材に応じてくれた。ダグアウト内の王会長の周りを、グラウンド側から多くの報道陣が取り囲んだ。
「でも、まだこれから。今日は(ソフトバンクに来て)初めてだからね。ミートを心がけているっつう感じになっているね」
王会長は優しい眼差しを向けていたのだが、正直、筆者は心の中に違和感が芽生えた。王会長と視線を合わせるため、ダグアウトの縁に手をかけた状態で膝立ちとなっていた筆者はこんな言葉を手渡してみた。
――でも、2年前には一軍で10本のホームランを打っていますよね。

