- #1
- #2
野球のぼせもんBACK NUMBER
巨人から電撃トレードも「まだ福岡でホテル暮らし」秋広優人“その後”…練習を見た王貞治がソフトバンク現地記者に“本音”「おとなしい打ち方するね」
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/13 06:01
電撃トレード移籍から1カ月。ソフトバンク秋広優人の様子は?
すると王会長は大きな笑みを浮かべ、筆者の手の甲をポンポン叩きながらこう言った。
「10発ぐらいは打ったうちに入らんのよ(笑)。やっぱり20本、30本、打ちゃあね。(その年に)どれだけ打席に立ったか分からないけど。でも頑張って、思い切って。とにかくやるしかないんだから。あそこ(打席)に立てるのは自分だけ。その打順で立てるのは自分だけなんだから。ドキドキするなとは言えないけどさ、やるしかないんだよ」
世界一の868本もホームランを打った人にしか言えない言葉だ。王会長にすればジョークで返したつもりなのだろうが、やけに重たく感じた。
では小久保監督は秋広をどう評価?
ADVERTISEMENT
筆者が抱えた違和感の正体。それは、ホームランより率という秋広のアプローチだ。王会長は教え子たちに幾度となくこんな言葉をぶつけていた。
「練習では背骨がバキバキ鳴るくらい振れ」
「昨日よりも1ミリでも遠くに飛ばせ」
単にホームランを狙えと言っていたわけではない。試合になれば相手投手に合わせて打撃をしなければならないため、練習のような自分のベストスイングはできなくなる。「試合では80%のスイングしかできない。練習で120%で振っておけば、試合で振れる力も強くなっていく」という持論に基づいたものだった。
かつてその教えを愚直に実践していた一人が、現役時代の小久保裕紀監督だった。8度の手術を経験しながら40歳を超えるまでプレーし通算413本塁打を放ったスラッガーは、選手人生を振り返ったときに「若い頃から軽打ばかりしていたら、早い衰えに繋がっていたと思います」と口にしていた。
〈つづく/第2回も公開中〉

