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「移籍しようと考えているんですが…」若手選手の質問に“Bリーグ3度優勝”「35歳の守備職人」はどう答える? アドバイスの“意外な中身”とは
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTOCHIGI BREX INC.
posted2025/06/14 17:02
Bリーグ王者・宇都宮ブレックスで活躍する35歳の遠藤祐亮。近年は若手から移籍の相談を受けることも増えたというが、「仕事人」の答えは…?
その結果として、遠藤には勲章ができた。それは3つのチャンピオンリングだけではない。栃木ですくすくと育ってきた愛息の成長の記録が、優勝時の写真とともに残っているからだ。
2017年の初優勝の写真には、まだ赤ん坊だった我が子とともに写っている。
2022年のときにはさらに大きくなり、今年は立派に成長したお兄さんとなった息子とともに喜ぶ遠藤の姿が記念になった。いつか現役を引退する日が来たとしても、頑張って勝ち取ったタイトルと愛息がともに収まった写真の輝きは色あせない。
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だから優勝を決めた直後、ジーコ・コロネルヘッドコーチ(HC)代行がコートサイドで受けたヒーローインタビューで訴えた想いはよく理解できた。
「本当に感謝したい人はたくさんいますが、特に2人に感謝したいと思います。(この2月に急逝したHCのケビン・)ブラスウェルコーチのお子さんのハーロウとヘンドリックス。『あなたのお父さんは本当にこのチームを信じていました。
彼はこのチームが本当にスペシャルなチームになれることを信じていました。人生この先、良いことも悪いこともたくさんあると思いますが、自分を信じることを忘れないで。あなたたちには本当に素晴らしいお母さんがついているから!』」
今年2月に急逝…ブラスウェルヘッドコーチの存在
その言葉を訳す通訳も言葉につまるような状況に、ブレックスが失ったものの大きさが表れていた。
最愛の指揮官をなくした痛みは遠藤の胸に今も残っている。
「優勝して『なんでケビンはいないんだろう』という思いが改めて湧いて来て。『一緒に優勝したかった』と……。そのときもまだ、きつい部分はありました」
ブラスウェルHCは今年1月、突然、心臓疾患のために倒れた。
そこで緊急手術を受け、その合併症と戦ってきた。しかし、周囲の必死の願いもかなわず、2月24日に46歳という若さでこの世を去った。選手たちが指揮官に顔を合わせられたのは、魂が天に旅立った後のことだった。35歳の遠藤は言う。
「自分とあそこまで近い人が亡くなるのは初めての経験でした。祖父母の死は経験していますけど、自分の周りでこんなに年齢の近い人が亡くなったことはなかったし。ほぼ毎日のように顔を合わせていた人が、倒れる前までは普通に話していた人が、急にいなくなるというのも初めてだったので。本当にしんどかったです」

