核心にシュートを!BACK NUMBER
「移籍しようと考えているんですが…」若手選手の質問に“Bリーグ3度優勝”「35歳の守備職人」はどう答える? アドバイスの“意外な中身”とは
text by

ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTOCHIGI BREX INC.
posted2025/06/14 17:02
Bリーグ王者・宇都宮ブレックスで活躍する35歳の遠藤祐亮。近年は若手から移籍の相談を受けることも増えたというが、「仕事人」の答えは…?
遠藤は言う。
「同世代の選手とはよく話すんです。『今の若い選手って、上手にドリブルもつけるし、シュートも上手いし、ディフェンスもしっかりできるし、身体もしっかりできあがっている選手が多いよね』と」
ただ、まずはプロの世界で通用する武器を1つは磨く必要があると遠藤は考えている。
ADVERTISEMENT
遠藤の場合は、それがディフェンスだった。そのおかげでBリーグのベストディフェンダー賞を2回も受賞した。大きな武器を手にして初めて、他の能力もまた高く評価されるようになった。
守備を売りにした選手としてはとても珍しく、遠藤は2018-19シーズンにBリーグのベストファイブに選ばれているが、そのシーズンは守備に加えて3Pの成功率でもリーグトップを争うほどの成績を残していた。だからこそ、それほど高く評価された。
今ではブレックスに必要不可欠な存在である、自他ともに認めるレジェンドとなった。ただ、確固たる地位を築く前に移籍を選ばなかったのは何故なのか。
「やっぱり僕はブレックスに拾ってもらった存在だったので」
一つ目の理由が、恩義である。ただ、それだけではない。
遠藤の心を動かした「妻の言葉」
2012年に若手の育成を目的としたブレックスの下部組織に入り、そこから13年ほど戦ってきた遠藤にも、思うように試合に出られない期間はあった。そういうとき、相談する相手が一人だけいた。それが妻である。彼女からかけられた言葉が本質をとらえていると感じたからだ。
「妻はスポーツを全くやってこなかったし、バスケについても詳しくないんですよ。ただ、彼女に相談すると『それはそうでしょう。他の選手と比べて足りないものがあるからなんじゃない?』と言われて。でも、その通りだったんですよね」
彼女の指摘は的を射ていた。
「僕が出られないときには、古川(孝敏)選手、小林(大祐)選手、ナベさん(渡邉裕規)がいたわけで。そういう選手に勝ちたいと思って、毎日練習に挑んでいた。そういう選手がいたからこそ、自分は成長できたので。仮に移籍するにしても『このチームでポジションを勝ち取ってからじゃないと、正直、ダサイだろ』と考えるようになりました」
ただ、ブレックスで定位置をつかむと、さらに重要な存在になりたいと思った。そして、さらに練習に打ち込んだ。気がつけば13年がたっていた。

