核心にシュートを!BACK NUMBER

「移籍しようと考えているんですが…」若手選手の質問に“Bリーグ3度優勝”「35歳の守備職人」はどう答える? アドバイスの“意外な中身”とは 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

PROFILE

photograph byTOCHIGI BREX INC.

posted2025/06/14 17:02

「移籍しようと考えているんですが…」若手選手の質問に“Bリーグ3度優勝”「35歳の守備職人」はどう答える? アドバイスの“意外な中身”とは<Number Web> photograph by TOCHIGI BREX INC.

Bリーグ王者・宇都宮ブレックスで活躍する35歳の遠藤祐亮。近年は若手から移籍の相談を受けることも増えたというが、「仕事人」の答えは…?

 ただ、プロとして試合を戦わないといけない責任はある。

「最初は『これで本当に試合をやるのか?』という感じでした。もちろん試合のときにはみんな、気持ちを切り替えてやっていました。でも、試合が終わるとまた……きつかったですね。そんなこと普通じゃありえないじゃないですか? 本当の意味では切り替えられなかったというか」

 ベンチにはいつも遺影が置かれ、その足元にはブラスウェルHCの頭文字の「KB」と書かれた水のペットボトルが用意されていた。

ADVERTISEMENT

 むしろ、喪失感や悲しみを抱えたまま、一緒に歩んでいったのが優勝への道のりだった。

 実際、優勝した後もブラスウェルの死を悼むというよりも、生前の指揮官が今も隣にいるような形で彼らは喜びを表現していた。

表彰式には前指揮官の遺影も…

 優勝決定直後にはチーム全員が身を包んだTシャツで遺影をくるみ、一緒になってトロフィーを掲げた。直後のシャンパンファイトでは彼の写真の目のところにゴーグルをかけ、ビニール袋で覆い、会場に一緒に入った。優勝から3日後に行なわれたBリーグの表彰式では、ファイナルの会場となった横浜アリーナのバスケットゴールのネットを遺影にかけ、選手たちの晴れ舞台を見守ってもらった。その理由を遠藤はこう話す。

「KB(※ブラスウェルのニックネーム)はおしゃべりで、いたずらもするし、選手みたいにバカなこともするし、とにかく明るい雰囲気を作ってくれる人でした。本当に超良い人だったので。しんみりするのはKBにとって、嬉しいことではないのではないかという思いもあって」

 ブレックスが悲劇を乗り越えたと表現するのをためらわせる理由もそこにある。彼らの心は今も彼と一緒にある。むしろ、ブラスウェルはブレックスとともに、これからも生き続けるのかもしれない。

 実は、Bリーグ開幕時から9シーズン目の現在まで在籍し続けている選手の数はブレックスがもっとも多い。その数は4人。前述の通り、移籍の盛んなバスケ界においては異例の人数だ。

 それは彼らが歴史やカルチャーを大切にしてきた証拠であり、その積み上げがブレックスをBリーグでもっとも多く優勝したチームへと成長させたとも言える。

 ブラスウェルが作り上げたチームが日本一になったという事実を残そう。そんな想いを胸に戦ってきたシーズンがようやく終わった。

 それでも、遠藤はこう言う。

「優勝して、あの遺影を見たとき――『この場に一緒にいたかった』と改めて思いました」

#1から読む
「自分はアンダードッグ」Bリーグ“3度目制覇”の宇都宮 田臥勇太でも、竹内公輔でもなく…唯一“全ての決勝で先発”「35歳の超苦労人」の正体とは?
この連載の一覧を見る(#1〜3)

関連記事

BACK 1 2 3 4
#遠藤祐亮
#宇都宮ブレックス
#田臥勇太
#竹内公輔
#辻直人
#比江島慎
#群馬クレインサンダーズ

バスケットボールの前後の記事

ページトップ