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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥も乗せられた? 「気持ちが攻撃に振り切れてしまう」米国でのファイトを最も知る男・亀海喜寛が見た井上戦「歓声が日本と段違いなので」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/05/20 11:02
2014年、ロバート・ゲレーロとの一戦での亀海喜寛。アメリカでは自然と“激闘型”のファイトをしてしまったという。福田直樹氏によるこの写真は全米ボクシング記者協会の2014年最優秀写真に
気持ちが攻めになって、止められなくなる
「観客のみなさんの盛り上がりが日本とアメリカでは違う。気質の違いっていうんですかね。日本はダウンを取って“ワー”となりますけど、アメリカはボクサーがアクションを起こすたびに小さい“ワー”があって、ダウンがあるともの凄いことになる。会場にもよりますけど、映像で見るより、実際のほうが声量は大きい。セコンドの指示が聞こえなくなるし、あの歓声は天から降ってくるような感覚にもなる。だから余計に気持ちが入るんです。
(攻撃に)振り切ってしまって、パンチを当てた一方でメチャメチャもらってしまった。自分の“感情をブレーキする”冷静さが必要なのに、そこが本当に難しい。
アメリカで戦った同じ帝拳ジムの中谷正義くんや、元世界チャンピオンの伊藤雅雪くんも『段々と気持ちが攻めになっていって、止められなくなってしまう』と言っていて、僕も同じ感覚。アメリカで日本人ボクサーはマイノリティだから、盛り上げてやるっていう気持ちもあるからだと思うんです」
井上もアメリカのムードに乗せられたのか
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井上がカルデナスの左フックを食らってダウンをもらったのも、ひょっとするとアメリカの雰囲気に乗せられたのかもしれない。ただその直後から、攻めのスタイルを崩さずとも被弾を許さなかった。ブレーキをかける冷静さがあったのはさすがだ。
試合自体を光らせるBサイドが、Aサイドに一気に変わっていく醍醐味が本場アメリカのボクシングにはある。あのマニー・パッキャオだってそうだった。
BサイドからAサイドへ、亀海もアメリカンドリームを追い掛けていた。さらに評価を高めることになるのが“メキシコの激闘王”との運命的な邂逅であった。
〈全2回の1回目/つづく〉

