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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥に求められるのは「凄いライバルとの闘い」“東洋の激闘王”亀海喜寛の見果てぬアメリカンドリームと「強い選手とやりたい」井上への共感
posted2025/05/20 11:03

亀海喜寛とヘスス・ソト・カラスとの第1戦。この激闘が「ザ・リング」誌のファイト・オブ・ザ・イヤー候補となり、亀海はアメリカでの評価を上げた
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Naoki Fukuda
2016年4月15日、ロサンゼルスのベラスコ・シアターは満員の観客で溢れていた。
“メキシコの激闘王”ヘスス・ソト・カラスと“東洋の激闘王”亀海喜寛とのスーパーウェルター級10回戦をメーンに置く興行は小規模の会場とはいえボクシングファンの関心を呼び込んでチケットはソールドアウトとなり、追加発売されたほどだった。
“激闘王”対決で「まだ終わんねえのか」
期待どおりのド突き合いだった。
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2ラウンドに偶然のバッティングによって亀海の右目上がカットしたものの、手が出ない時間などないフルアクションの交差が続いた。狭い会場は終始歓声がぶつかり合い、高止まりしたテンションが落ちることはなかった。
亀海は意外なことを告白する。
「あの試合、実はコンディション調整がうまくいかなかった状態で臨んでいたんです。時差の影響があったのか、リカバリーが今ひとつで疲れやすいと感じていて。リングに上がる前も、思ったように力が入らないから“これはやべえな”って」
ただ試合が始まってしまえば、気に留めることもない。会場のボルテージが亀海をスイッチオンの状態にさせ、果敢に手を出してくるソト・カラスを押し返していく。叩きまくったボディー攻撃が功を奏して、後半は明らかに亀海ペースであった。
「さすがに最終10ラウンドはきつかったですね。ラウンドの最初はガーッと打ちにいくんですけど、もう疲れてしまって。相手も同じで、倒す力もない。お互いもう気持ちだけですよね。余力を振り絞って、意地でもポイントを取らなきゃいけなかった。何とか下がらせたいと思う一方で、まだ終わんねえのかって正直思いましたよ(笑)」
スタンディングオベーションが
体内に残っていたエネルギーはすべて使い果たした。終盤にはスタンディングオベーションが起こり、試合が終わってもなお人で埋め尽くされた会場の興奮度は伝わってきた。