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鹿島・鬼木達の“表情が変わった”ある質問「厳しい言い方をすれば…」古巣・川崎Fに“意外な本音”「(ACLEは)勝たないといけなかった」国立決戦ウラ側
text by

いしかわごうGo Ishikawa
photograph byMasashi Hara
posted2025/05/13 11:07
古巣・川崎フロンターレとの対戦で激しいアクションを見せる鹿島アントラーズの鬼木達監督。5月11日、国立競技場
ACLE決勝後に長谷部監督が語った“前任者への感謝”
時計の針を1週間ほど前に戻す。
5月4日、川崎フロンターレはクラブ史上初めてACLE決勝の舞台に立ち、そしてアル・アハリに敗れた。
日程面や環境など不利な条件や言い訳を挙げればキリがなかったが、勇敢な戦いぶりを含め、胸を張れるアジア準優勝だった。
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この敗戦直後。ピッチではまだ優勝セレモニーの準備をしている最中だったが、DAZNのフラッシュインタビューに現れた長谷部監督は、その第一声でこう切り出している。
「前監督、鬼木さんから引き継いで、ここまではうまく持ってくることができましたが、最後まで役目を果たすことができませんでした。悔しい思いでいっぱいです」
アジアの頂点をかけた試合を終えたばかりである。指揮官にもあらゆる感情が入り混じっていたはずだ。しかし、彼は前任者である鬼木達に対する敬意を踏まえた言葉から述べたのである。
そこに、どんな思いがあったのか。
帰国後の麻生グラウンドでの練習後に、長谷部監督自身がこう明かしている。
「ACLEについては、彼(鬼木監督)がそこまで持っていき、私が引き継いで決勝まで行けたということでコメントをしました。うまくいきましたけど、最後に勝てなかった。100点満点ではないですが、感謝の気持ちがあります」
前指揮官に対する確かな敬意と感謝が、そこにはあった。
ACLEでの長谷部フロンターレは、鬼木前監督の思いも背負って戦っていたのである。
“S級の同期”鬼木達と長谷部茂利の関係性
鬼木達と長谷部茂利。
選手として川崎フロンターレに在籍経験を持つ2人は、引退後の指導者S級ライセンス講習で同期だった。海外研修ではドイツに行き、2週間ほど同部屋で生活も共にした間柄だ。日頃から連絡を取る仲でもあり、国立での決着後も、握手をした後、少しの間だが楽しそうに会話を交わしていた。
長谷部の人物像については、鬼木が「強い信念のある方」と話していたことがある。この鬼木評を長谷部本人に尋ねると、「どうでしょう。自分ではわからないです」と笑顔で肯定も否定もしなかった。ただ前クラブであるアビスパ福岡に初タイトルをもたらし、川崎を率いてACLE決勝進出と、クラブの歴史を塗り替えた手腕は疑いようがない。いずれも、強い信念に基づくものがなければ成し得なかっただろう。
一方で長谷部は鬼木について「たくさん優勝した人。監督として一番すごいこと。優勝させてきた監督ですから」と言及し、その人柄を「優しい方です」と親しみを込めて語っていた。


