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伊沢拓司が勝てなかった「史上最高のクイズプレーヤー」はなぜ突然、表舞台から消えた?…「クイズの帝王」を破った“本当の天才”の青春秘話
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byL)本人提供、R)Keiji Ishikawa
posted2025/05/14 11:00
開成クイズ研究部の先輩・後輩として、切磋琢磨した伊沢拓司と青木寛泰
先輩・伊沢がはじめて抱いた“青木への恐怖心”
早押しが始まるセカンドラウンド以降では、青木は早々に敗退した。
ただ、どちらかといえば学外に遊びに出ることで社会的な知識を得ることが多かった伊沢に対し、青木は純粋培養のクイズのトレーニングのみで、ここまで駆け上がってきていた。
それは、伊沢からすれば小さな恐怖を覚える出来事でもあった。
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この頃には、青木自身も小さな成功体験を感じはじめていたという。
「入学してクイズをはじめて、それまでは大会で全然成果が出なくて。この頃までは『このやり方で大丈夫なのかな?』みたいなのがあったんですけど、若獅子杯あたりからなんとなく結果が出はじめて。やり方は間違ってないんだなというのは感じるようになりました」
そんな関西遠征からの帰り道。
岐阜の大垣駅から乗り込んだ「ムーンライトながら」の中で、青木と伊沢は夜通し話をしたという。
どうしたらもっとクイズが強くなれるのか。どうすれば、開成高を強くできるのか。どんな勉強法をすればいいのか。
ふと「強くなりたいね」とつぶやいた伊沢に、青木は「そうですね」と返した。
それは紛れもなく、クイズに学生生活をかけようとしている中学生男子同士の、熱い青春の1ページであった。
だが皮肉にも、2人にとってこれが最初で最後の腹を割った会話となることになる。
